トロイリ鉱(読み)とろいりこう(その他表記)troilite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トロイリ鉱」の意味・わかりやすい解説

トロイリ鉱
とろいりこう
troilite

硫化第一鉄の鉱物。Fe(鉄):S(硫黄)は正確に1:1で磁硫鉄鉱と類似するが、これはかならず鉄が不足している。FeSとこれに近い化学組成のものでほぼ同構造のものすべてを一括して磁硫鉄鉱群が形成されている。自形報告。超塩基性岩中あるいはこれに伴われる正マグマ性鉱床、ある種の接触交代鉱床中に産するほか、古くから隕石(いんせき)の構成成分として知られている。日本では岩手県釜石(かまいし)市釜石鉱山から知られている。

 共存鉱物は接触交代鉱床の例では、磁硫鉄鉱、ペントランド鉱、マッキノー鉱mackinawite(化学式FeS1-x)、キューバ鉱黄銅鉱など。同定は一見磁硫鉄鉱であるが、非常にさびやすい。また磁硫鉄鉱のような磁性をもたない。命名は1766年イタリア、モデナ地方アルバレートAlbaretoに落下した隕石中から、最初に本鉱を発見した神父、ドメニコ・トロイリDomenico Troili(1722―1792)にちなむ。

加藤 昭]


トロイリ鉱(データノート)
とろいりこうでーたのーと

トロイリ鉱
 英名    troilite
 化学式   FeS
 少量成分  報告なし
 結晶系   六方
 硬度    3.5~4.5
 比重    4.85
 色     淡灰褐。空気中で速やかにさび,褐色の表面をつくる
 光沢    金属
 条痕    暗灰褐
 劈開    無
       (「劈開」の項目参照

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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