改訂新版 世界大百科事典 「ドロメ」の意味・わかりやすい解説
ドロメ (泥目)
gluttonous goby
Chasmichthys gulosus
スズキ目ハゼ科の魚。日本では東北以南から沖縄の各地の沿岸に生息する。形態,生態ともによく似ている種に,以前にはドロメの未成魚と考えられていたアゴハゼがあるが,ドロメはうろこが小さく,体側に黒点がなく,尾びれの縁辺が淡黄緑色で白っぽく見えることで区別できる。ともに貪食(どんしよく)で,甲殻類,ゴカイ類などを好み,簡単に釣り上げられ,一般にダボハゼと呼ばれ,マハゼ釣りの外道(げどう)として区別され親しまれている。塩分・温度の変化に強く汚水にも耐えられるので,炎天下の磯の潮だまりや汚染された川の汽水域などにも生息範囲を広げている。満1年で成熟し,産卵期は1~5月。潮だまりなどの大きな石の下面に隙間をつくり卵を産みつけ,卵を雄親が保護する習性がある。卵径は3.9~4.8mm×1.1~1.4mmの長楕円形で,卵数は800~1400個ほど。孵化(ふか)後浮遊期を経たのち約3cmで底に移る。全長13cmになる。とくに食用とはしないがつくだ煮にすることがある。
執筆者:松下 克己
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報