翻訳|Don Juan
イギリスの詩人バイロンの16編からなる未完の長編叙事詩。1819年に第1、2編刊行後、次々と発表、最後の第15、16編は死の1か月前(1824)に出た。セビーリャの一青年ドン・ジュアンは16歳のとき、人妻との恋のゆえ国外に逃れるが、暴風のためギリシアの島に漂着する。海賊の娘を恋し、そのため奴隷としてコンスタンティノープルへ売られるが、脱走してダニューブ(ドナウ)のロシア軍の陣営にたどり着く。そこで武勲をたてて、キャサリン女帝の寵(ちょう)を受け、ついにその使者としてイギリスに渡り、イギリスの文物を次々と槍玉(やりだま)にあげるところで中絶する。人間と社会、ことにイギリスの支配階級とその文化を冷嘲(れいちょう)かつ痛罵(つうば)した作品として、詩人の最後を飾る。
[上田和夫]
『小川和夫訳『ドン・ジュアン』上下(1993・冨山房)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…そこには因襲への抵抗と懐疑,大胆な自我宣言が共通にみられる。これと並行して風刺詩《ドン・ジュアン》(1819‐24),《審判の幻》(1822)も完成した。前者は冒険とロマンスのピカレスク風社会風刺詩の傑作である。…
…白い円錐形の帽子をかぶり,灰色の長いズボンをはいて,跳んだりはねたりするこの道化役は,アルレッキーノのような主役ではなく,軽い脇役であり,仮面をつけず,白っぽいメーキャップをするのが特徴である。フランスでは,たとえばモリエールの《ドン・ジュアン》(1665)に田舎言葉まる出しのまぬけな百姓役として登場するが,1673年,イタリア人俳優ジャラトーニG.Giaratoni(ジラトーネ)が,真っ白なダブダブの衣装に幅広の帽子をかぶったピエロとしてパリの舞台に登場して以来,ピエロは圧倒的人気を博し,定期市の娯楽の主役となった。 同じイタリア喜劇に起源をもつ白塗り,白装束の召使にジリオがあるが,ジリオがフランス語化してジルgilleとなり,17世紀に〈間抜けのジル〉役としてフランスで人気者となった。…
※「ドンジュアン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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