日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドーソン石」の意味・わかりやすい解説
ドーソン石
どーそんせき
dawsonite
ナトリウムおよびアルミニウムの含水炭酸塩鉱物。類似組成鉱物のバレンツ石barentsite(化学式Na7AlH2[F|CO3]4)とともにバレンツ石‐ドーソン石群を形成する。自形はc軸方向に伸びた針状あるいは長板状でa軸方向に扁平(へんぺい)になる。これが放射状集合や房状集合をなすこともある。アルカリ性冷泉からの沈殿物として生成されるほか、低温アルカリ性条件下で生成された堆積(たいせき)物の主成分をなす。この際石炭が伴われることもある。またアルカリ性、かつ十分な[CO3]2-の濃度の下、沸石相に属する変成岩の方沸石を交代して生成する。霞石閃長(かすみいしせんちょう)岩で貫かれた泥質堆積岩起源の接触変成岩中の脈中に産することもある。日本では大阪府泉佐野(いずみさの)市大木(おおぎ)や群馬県藤岡市下日野鈩沢(たたらざわ)で堆積岩中に脈をなして産する例がある。
共存鉱物はアルモヒドロカルサイト、苦灰石(くかいせき)、方解石、蛍石(ほたるいし)、方沸石、岩塩、曹長石(そうちょうせき)、石英、黄鉄鉱、あられ石など。同定は沸石と間違えられやすいが、(1)酸で発泡して溶解すること、(2)劈開(へきかい)が菱形(ひしがた)の断面を生ずるように発達すること、(3)沸石にはあまり出現しない絹糸光沢をもつことなどによる。原産地はカナダ、モントリオールのマクギルMcGill大学の校内の岩石の露頭であり、この大学の学長で地質学者でもあったジョン・ウィリアム・ドーソンJohn William Dawson(1820―1899)にちなんでドーソナイトdawsoniteという新鉱物が記載されたという説明板がそこに設置されている。
[加藤 昭 2018年5月21日]
ドーソン石(データノート)
どーそんせきでーたのーと
ドーソン石
英名 dawsonite
化学式 NaAl[(OH)2|CO3]
少量成分 K,Fe,Ti,Cr
結晶系 斜方(直方)
硬度 3
比重 2.43
色 無、白、淡紅
光沢 ガラス。繊維状の集合のものは絹糸光沢
条痕 白
劈開 二方向に完全
(「劈開」の項目を参照)