ナベヅル(読み)なべづる(英語表記)hooded crane

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナベヅル」の意味・わかりやすい解説

ナベヅル
Grus monacha; hooded crane

ツル目ツル科。全長 91~100cm。胸や背から後方は黒ずんだ灰色。頸から上は白いが,額から眼先は黒く,頭頂の裸出部位は赤い。繁殖地はロシア南東部,モンゴル北西部,中国東北部で,繁殖後はチャン(長)江下流域や朝鮮半島南部,日本に渡って越冬する。雑食性で,動物質,植物質のどちらも食べる。越冬地ではつがいか幼鳥 1~2羽を連れた家族で生活し,餌場には多くの家族が集まる。「くるる,くるる」と鳴き,ときに飛び跳ねて,いわゆる「ツルのダンス」を見せる。江戸時代には日本全国に飛来したが,大正時代以降はおもな飛来地は鹿児島県出水市と山口県周南市だけである。出水市では 1959年から給餌や保護活動が続けられ,近年の越冬数は世界の 8~9割に達している。環境省のレッドデータブックでは絶滅危惧II類,「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)では国際希少野生動植物種に,また国の特別天然記念物(→天然記念物)にも指定されている。ワシントン条約附属書I適用鳥。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナベヅル」の意味・わかりやすい解説

ナベヅル
なべづる / 鍋鶴
hooded crane
[学] Grus monacha

鳥綱ツル目ツル科の鳥。全長約105センチメートル、タンチョウマナヅルより一回り小さい。体はスレート灰色で、頭と上頸(じょうけい)は白く、頭上は皮膚が裸出して赤い。額は黒い。雌雄は同色、幼鳥は褐色に富んでいる。シベリア東部の湿原で繁殖し、日本、朝鮮半島、中国東部で越冬する。このうち日本は主要な越冬地で、鹿児島県出水市(いずみし)および山口県周南(しゅうなん)市八代(やしろ)に毎年渡来する。その数は出水市で1万0855羽(2000年)である。八代は1940年(昭和15)には355羽が飛来、1975年ころまでは100羽を超えていたが、年々減少して約20羽となり、保護策が講じられている。越冬地では主として水田湿地にすみ、小魚タニシ、水生昆虫などの動物食と穀物や柔らかい根などの植物食の両方をとっている。繁殖は最近まで不明であったが、1974年に初めて巣が発見された。その巣は湿地近くの地面が平らになった所にあった。しかし、繁殖生態についてはまだ知られていないことが多い。

[森岡弘之]


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