クロヅル(読み)くろづる

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クロヅル」の意味・わかりやすい解説

クロヅル
Grus grus; common crane

ツル目ツル科。全長 100~130cm。頭頂は赤く,額,眼先から頬,前頸上部,後頭は黒い。眼の後ろから後頸にかけては白い。次列風切羽や尾羽,上尾筒の各先と初列風切羽は黒い。そのほかの全身は淡い灰褐色から灰色で,繁殖地の東部より西部にすむ亜種の方が色彩が暗い。三列風切羽は長く,を閉じると尾羽を覆って後方にたれる。ナベヅルに似ているが,ナベヅルは頸全体が白い。ヨーロッパ中北部からシベリアまでのユーラシア大陸で繁殖する。ヨーロッパ中部以北から中央アジアモンゴル北部,ロシア北東部のコルイマ川,南部のアムール川上流あたりまでは夏鳥(→渡り鳥)で,黒海の南部や東部では留鳥である。巣は湿原や草原浅瀬に草を積み上げてつくる。越冬地は地中海地方やナイル川インダス川,ヒマラヤ南山麓の河川の流域などで,干潟や川の中州にねぐらをとる。湿原や農耕地で採食し,雑食で,植物質から昆虫,小哺乳類まで食べる。日本では迷鳥として全国に記録がある。

クロヅル(黒蔓)
クロヅル
Tripterygium regelii

ニシキギ科の落葉つる性低木。おもに西日本と東北地方の日本海側の山中に生じる。茎の太さは 15cmにも及び,内皮はオレンジ色をしている。葉は卵形支脈はあらい皺となり,長さ 10cmにもなる。初夏の頃,淡黄色の細花を枝先につける。果実蒴果で,三方に翼を伸ばし,黄褐色になる。ギョウジャカズラ別名があるが,この繊維行者袈裟を織る経糸 (たていと) に用いたゆえという。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロヅル」の意味・わかりやすい解説

クロヅル(黒蔓)
くろづる / 黒蔓
[学] Tripterygium regelii Sprague et Takeda

ニシキギ科(APG分類:ニシキギ科)の落葉藤本(とうほん)。枝はつるとなり赤褐色で、低い稜線(りょうせん)がある。葉は卵形で長さ5~15センチメートル、低い鋸歯(きょし)がある。花は7、8月に開き、白色、直径約5ミリメートルで、枝の先の大形の円錐(えんすい)花序に多数つき、花序に短毛がある。果実は3枚の翼がある翼果で、種子は1個。深山に生え、本州の日本海側の山地と紀伊半島の山地および四国、九州、朝鮮半島、中国に分布する。抗がんや抗炎症などの薬効成分を含むことが発見された。品種ウラジロクロヅルは葉の裏面が白いものをいう。九州南部や屋久(やく)島には、全体が小形で花序に毛のない別種コバノクロヅルT. doianum Ohwiがある。クロヅル属は東アジア特産の属で、4種があり、ここに述べた以外の2種は中国大陸や台湾に分布する。

[門田裕一 2020年2月17日]


クロヅル(黒鶴)
くろづる / 黒鶴
common crane
[学] Grus grus

鳥綱ツル目ツル科の鳥。ヨーロッパで現在繁殖している唯一のツル。全長約1.1メートル。体はスレート灰色で、頭頸(とうけい)部は黒色であるが、目の後方から頸(くび)側にかけて細長い白帯があり、頭上・後頭は裸出し、後頭部は赤色である。ヨーロッパ北部からシベリア南東部まで分布し、冬期にはアフリカ北部およびアジア南部で越冬する。日本には、他のツル類に混じって毎冬数羽が渡来する。水田や湿地にすみ、穀物、芽、根などを食べ、小魚や水生小動物もときどき食べている。ツンドラや広い湿地の地上に巣をつくり、繁殖する。

[森岡弘之]


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