ニュージャーナリズム(読み)にゅーじゃーなりずむ(その他表記)new journalism

デジタル大辞泉 「ニュージャーナリズム」の意味・読み・例文・類語

ニュー‐ジャーナリズム(New Journalism)

記者が単なる情報記録者ではなく、取材対象と個人的なかかわりあいをもつことで、事件本質を伝えようとする報道手法

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精選版 日本国語大辞典 「ニュージャーナリズム」の意味・読み・例文・類語

ニュー‐ジャーナリズム

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] new journalism ) 客観報道を旨とする従来ジャーナリズムに対し、記者が単なる情報の記録者であることをやめ、取材対象と個人的なかかわりあいを持つことで、事件の本質を伝えようとする報道の手法。一九六〇年代にアメリカで始まった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニュージャーナリズム」の意味・わかりやすい解説

ニュー・ジャーナリズム
にゅーじゃーなりずむ
new journalism

新しい報道主義の考え方。従来のジャーナリズムが客観報道を至上命令としていたのに対し、「記者が……取材対象との間に個人的なかかわりを成立させ……小説家の目で……フィクション作家の手法で」(H・ブラウン国際基督(キリスト)教大学準教授。日本新聞協会刊『新聞研究』誌1972年8月号)、自由に思いきった表現活動をするのを特徴とする。インベスティゲイティブ・リポート(調査報道)、テーマ主義、追跡報道、告発・抗議報道などもニュー・ジャーナリズムの特徴といえる。この潮流は、1960年代を通じてアメリカで台頭し、1970年代初めに明確に位置づけられるものとなった。提唱者としてはトム・ウルフが有名であり、書き手としては『ニューヨーク・タイムズ』の内幕もの『王国と権力』(1969)を書いたゲイ・タリーズGay Talese(1932― )が代表格。この派のスタイルの特性から、N・メイラー、T・カポーティなどの作家もニュー・ジャーナリストとみなすことができる。

[桂 敬一 2018年5月21日]

『G・タリーズ著、藤原恒太訳『王国と権力』(1971・早川書房)』『栗林利彰著『ニュー・ジャーナリズム』(1978・汐文社)』

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知恵蔵 「ニュージャーナリズム」の解説

ニュージャーナリズム

1960年代、アメリカで成立した、ジャーナリズムにおけるルポルタージュ風エッセイの叙述方法。ノーマン・メイラーのエッセイ集『ぼく自身のための広告』(59年)あたりが原点とされる。ゲイ・タリーズ『汝の父を敬え』(71年)、トム・ウルフ『ライト・スタッフ』(79年)などが代表作。新聞記事のように、事件を、距離を置いて総括的に過去形で語るのではなく、会話を多用し、一人称や現在時制を進んで採用して、書き手の人格前面に打ち出し、焦点となった場面の臨場感あふれる再現を目指す。時に、登場人物の内面に自在に入り込んで、臨席していないことまで現場に立ち会っていたように書くことになるため、当然そこには必要最小限度のフィクションが混入してこざるをえない。その意味でニュージャーナリズムがジャーナリズムの側からフィクションに一歩接近したものであるとすれば、フィクションの側からノンフィクションの側に一歩接近したのが、トルーマン・カポーティが『冷血』(66年)によって打ち立てた、ノンフィクション・ノベル(Nonfiction Novel)というジャンルである。ニュージャーナリズムとノンフィクション・ノベルの影響は、日本の記録文学の伝統、ジャーナリズムのスタイルに大きく作用して、沢木耕太郎に代表される新しい書き手を生み出していった。佐木隆三『復讐するは我にあり』、村上春樹『アンダーグラウンド』などは、日本版ノンフィクション・ノベルの代表作。

(井上健 東京大学大学院総合文化研究科教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「ニュージャーナリズム」の意味・わかりやすい解説

ニュー・ジャーナリズム
new journalism

1960年代のアメリカに生まれたジャーナリズム。公的機関などの〈発表もの〉が大半を占めていた従来のジャーナリズムへの批判として,みずから〈ニュース〉を発見し,徹底した取材に基づき,より正確な事実・情報の提供を目ざす。集団ではなく基本的には1人のジャーナリストによって行われる。記事の対象となる人物の心理描写,密談の再現なども含まれるため,フィクションではないかという批判も一部にある。マフィアを扱ったゲイ・タリーズの《汝の父を敬え》(1971),宇宙飛行士の訓練や実生活を描いたトム・ウルフの《ザ・ライト・スタッフ》(1979)をはじめ,D.ハルバースタム《ベスト&ブライテスト》(1972),B.ウッドワードとC.バーンスタインの共著《大統領の陰謀》(1974)などがニュー・ジャーナリズムの収穫といえよう。活力を失った第2次大戦後の小説にとって代わる,新しい文学のジャンルとして評価されることもある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニュージャーナリズム」の意味・わかりやすい解説

ニュー・ジャーナリズム
new journalism

1960年代のなかばからアメリカのジャーナリズム界に起り,論議の的となった報道様式の変革をさす。一般にジャーナリズムが陥りやすいといわれる断片性,常套的手法などを避けて,人々をより納得させる表現を目標とし,記者は単なるテープ・レコーダとして存在するのではなく,取材対象と個人的なかかわりを成立させることにより,事件と生活の実感を伝達しようとする。従来のジャーナリズムにおいては速報,簡潔,客観性を目標としてきたが,そうしたものを無視してフィクションの技法で主観的現実を描き,記者みずからが取材を積重ねた調査に重点をおいて,掘下げた報道を目指している。アメリカのウォーターゲート事件や日本のロッキード事件などの報道においてこの手法は有効性を発揮した。

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