ネプツニウム

デジタル大辞泉 「ネプツニウム」の意味・読み・例文・類語

ネプツニウム(neptunium)

アクチノイドに属する超ウラン元素の一。人工放射性元素であるが、天然にもウラン鉱石中に微量存在する。質量数237のものが最も半減期が長く、2140万年。銀白色の金属。名は海王星Neptune)にちなむ。元素記号Np 原子番号93。

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精選版 日本国語大辞典 「ネプツニウム」の意味・読み・例文・類語

ネプツニウム

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] neptunium ) 超ウラン元素一つ。元素記号 Np 原子番号九三。原子量二三七。銀白色の金属。一九四〇年アメリカのバークレー研究所で核実験中に発見された人工放射性元素。ウラン鉱石中に微量存在する。

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化学辞典 第2版 「ネプツニウム」の解説

ネプツニウム
ネプツニウム
neptunium

Np.原子番号93の元素.電子配置[Rn]5f 46d7s2の周期表3族超ウラン元素の一つ.アクチノイド元素の一つ.質量数237,半減期2.14×106 y でα崩壊するもっとも長寿命の核種のほか,質量数225~244の放射性核種が知られている.1940年,E. McMillan(マクミラン)とP. Abelsonにより,カリフォルニア大学バークレー校サイクロトロンでBeを重陽子で照射して発生させた中性子による天然ウランの衝撃で質量数239のβ崩壊核種(半減期2.4 d)が合成された.ウランの次の元素であるところから,太陽系の天王星uranusの次の惑星・海王星neptuneにちなみ,ネプツニウムと命名された.
237Npは原子炉中で238Uの(n,2n)反応あるいは235Uの2段階中性子捕獲によりつくられる.人工放射性元素であるが,ウラン鉱石中にごく微量存在する.三フッ化物を金属バリウムで還元すると,銀白色のネプツニウム金属が得られる.α,β,γの3変態があり,α相(斜方晶系)は,278 ℃ でβ相(正方晶系)に,577 ℃ でγ相(立方晶系)に転移する.融点640 ℃,沸点3900 ℃.密度(g cm-3):α 20.25(20 ℃),β 19.36(313 ℃),γ 18.0(600 ℃).第一イオン化エネルギー6.266 eV.常温では空気中で安定である.かなり反応性に富み,水素と反応し水素化物NpH3をつくる.酸化数は3~7で,もっとも安定な酸化数は5(ウランは6).超ウラン元素のなかでは化学的性質は一番ウランに似ているが,ウランに比べて低酸化状態が安定である.塩酸に可溶,硫酸,硝酸酢酸には難溶.酸化物Np O2(若緑色)は,金属の酸素雰囲気中での燃焼で得られる.さらに高温で燃焼するとNp2O5(暗褐色)となる.Np O3xH2O(褐色)は高温の溶融塩中でNp O2に O3 を反応させるなどの強力な酸化条件を必要とする.酸化数3~6のハロゲン化物が知られていて,NpはNpF3(紫色)からNpI3(褐色)まで,NpはNpF4(緑色)からNpBr4(暗赤色)まで,Np,Npはフッ化物NpF5,NpF6のみで,高い酸化数ほど不安定となる.NpF6(橙色)は融点53 ℃ で分解するきわめて腐食性の化合物である.酸性水溶液中では酸化状態に応じた特有の色を示す:Np3+ 青~紫色,Np4+ 黄緑色,Np O2緑色,Np O22+淡赤~赤色,Np O53-暗緑色(アルカリ性溶液).化合物,水溶液の色の多様性はアクチノイドの特徴である.[CAS 7439-99-8]

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改訂新版 世界大百科事典 「ネプツニウム」の意味・わかりやすい解説

ネプツニウム
neptunium

周期表第ⅢA族,アクチノイド元素の一つ。1940年,アメリカのマクミランE.M.McMillan(1907-91)とエーベルソンP.H.Abelson(1913- )によって発見された。すなわち1936年O.ハーンらが238Uに中性子を照射して得られる239Uがβ⁻崩壊(半減期23分)して放射性新元素を生ずることを見いだしていたが,これを初めて化学的に分離して2.3日の半減期をもつβ⁻放出体であることを確認した。周期表中ウランに続くものであるから,ウランの名称のもとになった天王星Uranusの外側にある惑星の海王星Neptuneにちなんで命名された。人工放射性元素ではあるが,天然にもウラン鉱石中に微量存在する。これは宇宙線の二次中性子,あるいはウランやトリウムの自然核分裂などで生成した中性子によって生ずるものである。

 銀白色の金属。展性があり,容易に加工できる。空気中では常温で酸化されないが,50℃で水素と反応して黒色の水素化物NpH3638をつくる。希塩酸に溶ける。ウランと同じく3,4,5,6価の化合物をつくるが,ウランに比べて低原子価のほうが安定となる傾向がみられる。水溶液中でも3価から6価をとり,それぞれ色を異にし,Np3⁺の化合物は青あるいは紫,Np4⁺の化合物は黄緑色。ネプツニルイオンのNpO2⁺では緑色,NpO22⁺では赤色のことが多い。NpO2⁺が最も安定である。ウランを燃料とする原子炉中から237Npがとり出されている。金属ネプツニウムは,NpF3またはNpF4を1200℃でバリウム蒸気で還元すると得られる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネプツニウム」の意味・わかりやすい解説

ネプツニウム
ねぷつにうむ
neptunium

超ウラン元素の一つ。1940年アメリカのE・M・マクミランとエーベルソンは、238U(n,γ)239Uで生成したウランのβ-放射によってネプツニウム239(β-放射、半減期2.3日)が生成することを確認した。周期表でウランに続くので、天王星Uranusに次ぐ惑星である海王星Neptuneにちなんで命名された。また1942年には最長半減期の237Npも発見された。人工放射性元素であるが、ウラン鉱石中に自然核分裂によるものが微量含まれる。ネプツニウム237はもっとも半減期が長く(β-放射、214万年)、(4n+1)崩壊系列をつくる(ネプツニウム系列という)。原子炉の使用済み核燃料からウランとプルトニウムを回収した後の硝酸溶液からイオン交換樹脂による分離と溶媒抽出法を組み合わせてNp(Ⅳ)の溶液を取り出す。金属を得るにはフッ化物とし、これをアルゴン気流中高温でカルシウムによって還元する。銀白色の金属。空気中室温では酸化されないが、高温では酸化物の被膜をつくる。希塩酸に溶ける。酸化数Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ、Ⅶの化合物が知られる。室温ではα型、280~577℃でβ型、577~640℃でγ型となる。人工衛星などで小型動力源として用いられる。

[守永健一・中原勝儼]



ネプツニウム(データノート)
ねぷつにうむでーたのーと

ネプツニウム
 元素記号 Np
 原子番号 93
 原子量  237.0482
 融点   640℃
 沸点   3900℃
 密度   α;20.45g/cm3(測定温度20℃)
      β;19.36g/cm3(測定温度313℃)
      γ;18.08g/cm3(測定温度600℃)
 結晶系  α;斜方
      β>287℃;正方
      γ>500℃;立方

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百科事典マイペディア 「ネプツニウム」の意味・わかりやすい解説

ネプツニウム

元素記号はNp。原子番号93。融点640℃。超ウラン元素の一つ。1940年E.M.マクミランとP.H.アーベルソンがウランに中性子を照射して初めてつくり,ウラン(天王星Uranus)の次という意味で,海王星にちなんで命名。銀白色の金属で,化学的にはかなり活性大。最も半減期の長い同位体は237Np(2.2×106年)。天然にもウラン鉱石中に微量存在する。
→関連項目人工放射性元素

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネプツニウム」の意味・わかりやすい解説

ネプツニウム
neptunium

元素記号 Np ,原子番号 93。半減期 2.2×106 年のα壊変核種のほか,10種の放射性核種が知られている。周期表3族のアクチノイド元素で,超ウラン元素に属し,1940年 E.マクミランと P.エーベルソンにより発見された。現在では原子炉によりマクロ量が得られている。単体は銀白色の金属で,室温でα体 (斜方) が安定。 278℃でβ体 (正方) に転移する。比重 20.5,融点 648℃。

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世界大百科事典(旧版)内のネプツニウムの言及

【原子力】より

…実際,このようにしてウランより重い元素が存在しうることが確かめられた。ウランより原子番号の一つ大きい元素はネプツニウム,二つ大きい元素はプルトニウムと名づけられた。1940年前後のことである。…

【人工元素】より

…天然に存在せず,人工的方法(核反応)によってのみ作り出される元素をいう。ふつう,周期表上原子番号43のテクネチウムTc,61のプロメチウムPm,85のアスタチンAt,87のフランシウムFr,および93のネプツニウムNp以降の諸元素(超ウラン元素)を人工元素とみることが多い。しかし,この定義は厳密なものとはいえない。…

※「ネプツニウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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