日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネルガル」の意味・わかりやすい解説
ネルガル
ねるがる
Nergal
メソポタミア神話で、疫病、戦争、洪水などの邪悪を代表する冥界(めいかい)の神。シュメール名はネ・ウヌ・ガル「大いなる都市(冥界)の支配」で、エラの別名をもち、クタ市のメスラム神殿で尊崇された。のちにセム人のもとに伝わり、パルミラでも信仰された。『旧約聖書』の「列王紀」下の17章30に「クタの人々はネルガルを造り」とある。シュメール神話「ネルガルとエレシュキガル」は、敬意を払うのを怠った罪によりエレシュキガル(エレシュ・キ・ガル「大いなる地の女王」)のもとに連れてこられたネルガルが逆にエレシュキガルを妻とする物語である。後代にはネルガルは1年の第4の月18日に冥界に下り、180日目に地上に戻ることになっている。14人の恐るべき従者を連れているが、すべて病魔である。
[矢島文夫]