ハイヤー(読み)はいやー(英語表記)hire

翻訳|hire

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハイヤー」の意味・わかりやすい解説

ハイヤー
はいやー
hire

元来は英語で「雇う」の意。旅客自動車運送事業の一つ。日本では、道路運送法(昭和26年法律第183号)で一般乗用旅客自動車運送事業とされ、法律上はタクシーとの区別はない。しかし、タクシー業務適正化特別措置法(昭和45年法律第75号)では、ハイヤーは「一般乗用旅客自動車運送事業を経営する者がその事業の用に供する自動車で当該自動車による運送の引受けが営業所のみにおいて行なわれるもの」(2条2項)と規定され、車両1台を貸し切る、完全予約制となっており、タクシーのような流し営業は禁止されている。また、車両の外部表示について、タクシーの場合は車両の前扉中央部に「タクシー」の文字および社名またはその略称もしくは記号を表示しなければならないと定めているのに対し、ハイヤーの場合は自動車の外側に事業者の氏名名称または記号を見やすいように表示することを定めている。運賃もタクシーとは別建てであり、ハイヤーでは車両が営業所を出てから戻るまで(回送運行区間と実車運行区間の合計)の時間と距離を基準に運賃が計算される。このため、タクシーのように迎車回送料金は追加されない。さらに、数時間貸し、半日貸し、1日貸し、週に2~3日貸しのような単発のスポット契約と、月極(つきぎめ)や年間などの長期契約がある。いずれの契約であっても、ハイヤー運賃はタクシー運賃と同じく総括原価方式(総費用+適正利潤)で算出される。なお、ハイヤー事業者によっては、運転者と車両をセットで提供する形式のほかに、運転者だけを提供し車両は契約者が用意する形式もある。

 2014年(平成26)1月から、ハイヤーは「都市型ハイヤー」と「その他ハイヤー」に区別されている。都市型ハイヤーは、国土交通省の告示(「特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法施行規程(平成26年国土交通省告示第56号)」)の第2条3項のイとロで規定された、1日を超える期間を単位として専属で常時運送を提供できる書面契約に基づく運送のみにより行われる形態、または2時間以上の時間を単位として締結される運送契約のみにより行われる形態のハイヤーをさす。都市型ハイヤー新設の背景には、都市部(特定地域と準特定地域)におけるインバウンド需要の増大に対応する意図がある。このため都市型ハイヤーは台数規制の対象から除外されている。都市型ハイヤーの登場により、時間制限がない従来のハイヤーは「その他ハイヤー」に分類されることになった。その他ハイヤーは新規参入原則認められていない。

 タクシーの運転者と比べると、ハイヤーの運転者には勤続年数や語学などの厳密な基準を満たした人が従事しており、良質なサービスに特長がある。なお、都市型ハイヤーはタクシーの自動認可運賃で、その他ハイヤーはタクシーの公定幅運賃の下限以上で、それぞれ運賃が設定される。

[松尾光芳・藤井秀登 2023年6月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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