日本大百科全書(ニッポニカ) 「はくちょう座」の意味・わかりやすい解説
はくちょう座
はくちょうざ / 白鳥座
夏の終わりから秋にかけての宵にほとんど頭上に見える星座。七夕(たなばた)の織女星ベガと牽牛(けんぎゅう)星アルタイルの間を流れる天の川の北の部分に位置し、明るい5個の星が大きな十字形をつくる。南天の南十字に対し、北十字とよばれることもある。この白鳥はギリシア神話では、大神ゼウスがスパルタ王ティンダレオスの妃レダを見そめ、彼女に会いに行ったときに化身した姿などとされている。北十字のうちいちばん目につくのは白鳥の尾のところに輝くデネブで、光度は1.3等級である。これは1等星のなかでは明るいほうではないが、距離1800光年という遠方にある巨星の一つである。アルタイル、ベガ、デネブを結んで「夏の大三角」を形づくる。小望遠鏡での見ものとしては、くちばしのところに輝くβ(ベータ)星アルビレオで、金色の3.1等星とエメラルド色の5.4等星が角距離約35秒隔てて並ぶ色彩の対比の美しい二重星として知られる。
[藤井 旭]
『瀬川昌男著『星座博物館「夏」』(1988・ぎょうせい)』▽『藤井旭著『夏の星座』(1988・金の星社)』▽『ヴォルフガング・シャーデヴァルト著、河原忠彦訳『星のギリシア神話』新装版(1988・白水社)』▽『広瀬洋治著『星空をさがす』(1990・誠文堂新光社)』▽『藤井旭著『夏の星座と星ものがたり――夏の星座と神話を楽しもう』(1993・誠文堂新光社)』