日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハッセル」の意味・わかりやすい解説
ハッセル
はっせる
Odd Hassel
(1897―1981)
ノルウェーの物理化学者。オスロ大学卒業(1920)後、ドイツのミュンヘン大学でK・ファヤンスに学び、吸着指示薬の検出(1923)に貢献した。1924年ベルリン大学で博士号を取得。1934年オスロ大学物理化学教授。
気体電子線回折による構造化学の研究で知られる。電子線回折は、X線回折、中性子線回折などとともに、物質構造解析のもっとも基本的な手段の一つであるが、気体状態に対してそれが初めて行われたのは1930年のH・F・マルクらの仕事が最初である。ハッセルはその後を受けて、気体電子線回折法が今日の分子構造決定の基本的方法として確立されるのに大きく貢献した。この方法により、シクロヘキサン誘導体の分子構造を解明し、シクロヘキサン分子のいわゆる椅子(いす)型モデルを実証した。それらの成果に対し1969年、D・H・R・バートンとともに「分子の立体配座の概念と解析」でノーベル化学賞を受賞した。
[荒川 泓]