日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハドラマウト」の意味・わかりやすい解説
ハドラマウト
はどらまうと
Hadhramaut
アラビア半島の南岸、イエメンの東部にある高原地域。広くは西のアデン地区と、東のオマーンに挟まれた地帯をいうが、普通はハドラマウト川の渓谷地帯をさす。ハドラマウト川はフスン・アブル地方に源を発しアラビア海に注ぐ全長560キロメートルの大きなワジ(涸(か)れ川)である。大小のワジが高原を切り込み豊かなオアシス農業地帯となっている。とくに中流地域は、綿花、穀類(小麦、トウモロコシ、キビなど)、ゴマ、野菜、ナツメヤシ、タバコなどを産する農業中心地である。ハドラマウト渓谷に沿って、古くて美しい町がいくつかある。ハドラマウト地方最大の町で、ナツメヤシが林立するセイユーン、古い大学と365のモスクがあるといわれる宗教的な町タリーム、日干しれんがによるイエメンの伝統的な高層建築で有名なシバームなどがその代表的な町である。
[原 隆一]
世界遺産の登録
5階建て以上の建築物が建ち並ぶシバームは1982年、ユネスコ(国連教育科学文化機関)により「シバームの旧城壁都市」として世界遺産の文化遺産(世界文化遺産)に登録された。しかし「地域情勢による潜在的な脅威」により、2015年には危機遺産リスト入りしている。
[編集部 2018年5月21日]