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香料貿易 こうりょうぼうえき

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

香料貿易
こうりょうぼうえき

いわゆる香辛料を中心とする東西の貿易をいう。スパイスの訳語としての香料は正確には香辛料であり,そのおもなものは胡椒,肉桂,丁香,肉豆く (にくずく) の4種である。いずれもアジアの熱帯地方に産し,特に丁香と肉豆くは,インドネシア東部のマルク (モルッカ) 諸島 (香料諸島) を長い間世界でほとんど唯一の産地とした。香料の需要は古代ギリシアやローマまでさかのぼり,また中国でも宋代頃から盛んになった。ペルシア湾からインドネシアに及ぶイスラムの伝播,15世紀初頭以来のマラッカ王国の繁栄,スペイン,ポルトガルの東洋進出などはいずれも香料貿易と深いかかわりをもった。ヨーロッパ諸国間の香料獲得のための競争は,1623年頃にオランダがモルッカ諸島の支配を完成したことによって終りを告げた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

香料貿易
こうりょうぼうえき

香料を主要な商品とする国際貿易をさす。歴史上もっとも重要な香料貿易は、インド、東南アジア産のコショウ、ニッケイ、チョウジ、ニクズクなどの貿易である。
 チョウジ、ニクズクの原産地はインドネシア東部のモルッカ諸島のいくつかの限定された島である。これらの島々は農業生産に適せず、来航する商人から香料と交換に食料品、衣料品などを入手していた。一方、コショウとニッケイとはインドのマラバル海岸が原産地である。これらの香料は古くからペルシア湾を越えてオリエント、そして地中海世界にもたらされていた。しかし、マラバル産のものだけでは需要を満たしきれなかったために、インド人商人が黄金を求めて東方に航海を始めると、東南アジアの各地にコショウを、セイロン(スリランカ)にニッケイを伝え、各地で栽培させた。これはおそらく紀元前2世紀~前1世紀までには始まっていたと思われる。各地の住民は、珍奇な品物をもたらすインド人商人を誘致するために、これらの香料を盛んに栽培するようになった。
 一方、ニクズク、チョウジの存在とその使用法が、いつごろ文明世界に知られるようになったのかはよくわからないが、紀元1世紀ごろまでには中国や西方にその使用法が知られており、やはりインド人商人によって取り扱われていたものと思われる。インド人商人はたぶんジャワでこれらの香料を買い入れたものと思われ、ジャワからモルッカ諸島までは、ジャワ人商人がジャワの産物を用いて交易に従事していたのであろう。
 香料貿易の終点としては、ヨーロッパ、西アジア、アフリカ、中国を考えることができる。これらの各地とインド、東南アジアを結ぶ貿易には、まずインド商人が進出していたが、7、8世紀ごろからアラビア人、ペルシア人商人の進出が始まった。中国人商人の活動は時期的に遅れ、その商圏も限定されていた。
 中国、ヨーロッパ、アフリカから送り出される商品は、そのルート上の中継地点で次々とほかの商品と交易され、香料の原産地では前に述べたように香料と生活必需品とが交易されるのである。
 15世紀に始まったヨーロッパ人のアジア進出が、香料を求め、またキリスト教の敵であるイスラム教徒を攻撃するためのものであったことは、よく知られている。ポルトガル人は初めこのような香料貿易のルートを完全に破壊して、ポルトガル人による独占を確立しようとしたが挫折(ざせつ)し、続いて進出してきたオランダ人、イギリス人は旧来のルートをフルに活用し、ヨーロッパでの価格を操作して利益をあげようとした。ヨーロッパから輸出される商品はメキシコ産の銀で、ヨーロッパ商人はこの銀でインド、中国の絹・綿織物などを購入し、それを用いて各地の拠点で必要な物資を調達し、それによって香料を入手するという方法をとった。香料の輸出先としては中国も重要であった。中国と東南アジアとの貿易の場合、ヨーロッパ人によってメキシコ銀がもたらされるようになると、香料貿易の重要性は二義的なものとなった。[生田 滋]

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世界大百科事典内の香料貿易の言及

【インドネシア】より

…オランダは1596年にジャワ海に現れ,1602年には交戦能力を備えた貿易独占会社であるオランダ東インド会社を成立させ,19年にはバタビア(ジャカルタ)をインドネシア海域における貿易活動の根拠地と定め,その後相次いでモルッカ海の要衝の地を攻略して要塞を築いていく一方,この海域の制海権を握った。こうしてオランダは香料貿易を独占することとなったが,それは,航路と港湾を制する〈海域支配〉を実現していくことを意味した。 1628年と29年にマタラム王スルタン・アグンはバタビアのオランダ軍を攻撃したが敗退し,逆にそれ以降オランダの支配権はジャワ内陸へ向かって拡大していった。…

※「香料貿易」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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