改訂新版 世界大百科事典 「ハマビシ」の意味・わかりやすい解説
ハマビシ (浜菱)
cultrop
puncture vine
Tribulus terrestris L.
ハマビシ科の夏緑性の一年草。形態的には多形な種であるが,茎は有毛で広く地面をはうように広がり,一部は互生し,多くは対生する偶数羽状複葉をつける。宿存する托葉を有する複葉は,長さ1cmあまりの数対の長楕円形の小葉からなる。夏季に葉腋(ようえき)から細い花梗を出し,1個の花をつける。花は杯状で径1~2cmほど,円卵形で黄色の5花弁を有する。おしべは10本で,そのうち長い5本は花弁に対生する。めしべは子房上位で5室。果実は径1cmほど,子房の各室が分離し,突起に長短それぞれ2本の鋭いとげをつける。この分離した果実の形がヒシの実に似て海岸に生えるので,ハマビシという。熱帯から温帯にかけての乾燥域に広く分布する。漢方で果実を刺蒺藜(ししつり)または蒺藜子(しつりし)というが,血圧を下げ,潰瘍をなおし,利尿する作用があり,強壮薬とされた。植物体の若い部分は野菜とされ,家畜の飼料とされることもある。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報