ハルトマンフォンアウエ(読み)はるとまんふぉんあうえ(英語表記)Hartmann von Aue

デジタル大辞泉 「ハルトマンフォンアウエ」の意味・読み・例文・類語

ハルトマン‐フォン‐アウエ(Hartmann von Aue)

[1165ころ~1215ころ]中世ドイツ宮廷詩人アーサー王伝説に取材した長編叙事詩エーレク」「イーベイン」、宗教的題材を扱った短編グレゴリウス」「哀れなハインリヒ」など。

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精選版 日本国語大辞典 「ハルトマンフォンアウエ」の意味・読み・例文・類語

ハルトマン‐フォン‐アウエ

  1. ( Hartmann von Aue ) 一二世紀から一三世紀初めのドイツの宮廷詩人。アーサー王伝説による宮廷叙事詩「エーレク」「イーベイン」や、宗教的物語「グレゴリウス」「哀れなハインリヒ」などを書いた。生没年不詳。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハルトマンフォンアウエ」の意味・わかりやすい解説

ハルトマン・フォン・アウエ
はるとまんふぉんあうえ
Hartmann von Aue
(1165?―1215?)

中世ドイツの詩人。ゴットフリートフォンシュトラスブルク、ウォルフラム・フォン・エッシェンバハと並び称されるドイツ中世3大叙事詩人の1人。その生涯は不詳ながら、旧シュワーベン地方のアウエに生まれ、かなり高度の教育を受けたのち、騎士としてさる宮廷に仕えたことは、作中の自己紹介から知ることができる。敬愛する主君の死にあい、十字軍に参加する決意を歌った十字軍の歌など十数編の叙情詩も残しているが、本領は四編の叙事詩にある。『エーレク』(1180~85ころ成立)、『イーベイン』(1200ころ)の二編はクレチアン・ド・トロアの作を粉本としたアーサー王物語で、いずれも主人公が数々の冒険を克服することによって、中世宮廷社会の理想の騎士となる過程を描いたもの。前者は彼の叙事詩第一作で、華麗な技巧特色とするが、最後の作とみなされる後者では対照的に淡々とした語り口をみせる。一方、中期の二編『グレゴリウス』(1190ころ)、『哀れなハインリヒ』(1195ころ)は宗教的素材を扱いながら、内に秘められた激しい感情を抑制のきいた筆致で描くなど、内容的にも技法的にもスケールの大きい詩人であるばかりでなく、人間存在の根元的問題をえぐる鋭い洞察は、今日もなおその迫力を失わない。

[中島悠爾]

『平尾浩三・中島悠爾・相良守峯・リンケ珠子訳『ハルトマン作品集』(1982・郁文堂)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハルトマンフォンアウエ」の意味・わかりやすい解説

ハルトマン・フォン・アウエ
Hartmann von Aue

[生]1170頃
[没]1215頃
中世ドイツの詩人。ホーエンシュタウフェン朝の三大宮廷叙事詩人の一人。豊かな教養をもち,騎士の宮廷生活を写し出すことに成功した最初の詩人。 1189年の十字軍に参加。騎士物語『エレック』 Erec (1190以後) ,『イーワイン』 Iwein (1202頃) はフランスの詩人クレチアン・ド・トロアにならってアーサー王伝説を素材にしたもの。『グレゴリウス』 Gregorius (1195頃) は聖人伝説を扱ったもの。『哀れなハインリヒ』 Der arme Heinrich (97以後) も宗教的題材を扱ったもので,中世文学の傑作の一つに数えられる。

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