日本大百科全書(ニッポニカ) 「バーグ」の意味・わかりやすい解説
バーグ
ばーぐ
Paul Berg
(1926―2023)
アメリカの分子生物学者。ニューヨークに生まれる。ペンシルベニア州立大学で生化学を学び1948年卒業、1952年にウェスタン・リザーブ大学で博士号を取得した。デンマークのコペンハーゲンにある細胞生理学研究所で研究生活を送ったのち、1955年にワシントン大学医学部の微生物学助教授となった。1959年スタンフォード大学医学部に移り、生化学準教授を経て教授となった。1969年から1974年まで生化学部門の主任教授を務めた。
1960年代中ごろより、哺乳(ほにゅう)類の遺伝子の発現と制御に関する研究を開始した。1972年に遺伝子の運び手(ベクター)として腫瘍(しゅよう)ウイルスSV40を使用して、大腸菌のλ(ラムダ)ファージとの組換えDNAを試験管内でつくることに成功した。これにより、ある生物からDNAの一部をとりだし、別の生物のDNAに挿入する遺伝子組換え技術が開発されたため、遺伝子工学のパイオニアとして高く評価された。この業績によって、核酸の塩基配列を決定したW・ギルバート、F・サンガーとともに1980年のノーベル化学賞を受賞した。バーグは、この技術によって予期せぬ危険な微生物が生まれる可能性があることを指摘、1975年にアメリカのアシロマで開かれた「遺伝子工学実験の安全性と対策を討議する国際会議」において実験基準づくりに努力した。
[編集部 2018年10月19日]