ひん岩(読み)ひんがん(その他表記)porphyrite

岩石学辞典 「ひん岩」の解説

ひん岩

porphyriteという岩石名はプリニウスが記載したporphyritesに由来している.プリニウスのporphyritesはエジプトで得られた赤い岩石であった[Pliny : 77].アグリコラはporphyritesという名称をまだら色の岩石に使用し[Agricola : 1546],後にプリニウスのporphyritesとアグリコラのporphyritesに分けて解釈されるようになった.この二つの岩石名は19世紀中頃までは同義であった.元来は18世紀頃から大きな結晶が細粒の石基に埋まっている岩石に使われていたが,後に深成岩と火山岩の中間的な岩石で斑晶があってもなくてもよいと拡張して使用された[Coquand : 1857].
ポーフィライトは昔は緑色岩に属していたが,ウェルナーやデラメテリーなどにより注目されるようになった[Werner : 1787, Delametherie : 1797].当時ポーフィライトはメラファイアと同義として用いられていたが,ブロニアールがメラファイアを独立させてからポーフィライトも独立した岩石となった[Brongniart : 1813].ナウマンはポーフィライトを石英のない岩石に限定し[Naumann : 1854],ローゼンブッシュは閃緑岩に相当する斜長石を含む第三紀以前の古い時代に迸入した岩石とした[Rosen-busch : 1877].ドイツではポーフィライトを斑状の有無にかかわらず中粒で閃緑岩に相当する古生代の岩石に用いる場合があった.ティールは地質時代は重要な要素とはせずに,ポーフィライトを安山岩が多少変質したものと定義した[Teall : 1888].岩石の名前に時代を加味することは問題があり,その後は考慮されていない.イディングスは斑状組織を持ち閃緑岩組成の半深成岩として使用した[Iddings : 1891].現在ではイディングスの定義が一般に使われている.
ポーフィライトは斜長石,輝石,角閃石を主としており,安山岩に相当する鉱物成分からなるものである.多くの場合に斑状組織が著しく,石基は結晶質であることが特徴である.野外で輝緑岩と混同されることがあるが,鉱物成分や構造などを精査すれば容易に区別することができる.ポーフィライトは斑晶としては斜長石を含みカリ長石を含まない岩石を指しており,カリ長石を含むものは斑岩(porphyry)という.
日本語の玢岩は1886年に西山正吾が用いたのが最初のようである[西山 : 1886, 歌代ほか : 1978].王偏に分と書く玢(ひん)の漢字は,玉のあやがあるさま,つまり玉石表面にいろいろの形や色彩模様,特に線が斜めに交わった模様のある様子をいう[諸橋 : 1958].この漢字の音はヒン(彬と同音)またはフン(芬と同音)で,岩石名は“ひんがん”と発音する[渡辺 : 1935].

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百科事典マイペディア 「ひん岩」の意味・わかりやすい解説

ヒン(【ひん】)岩【ひんがん】

安山岩質の成分をもった半深成岩。脈岩などのようにマグマが比較的急冷した場合にできる。斑状構造が著しく,石基は完晶質で斜長石(石英,正長石を伴うこともある)からなり,斑晶は斜長石,角セン石,黒雲母などで,その種類により黒雲母ヒン岩,角センヒン岩などとも呼ぶ。最近は斑岩と同義語に扱われ,あまり用いられない。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ひん岩」の意味・わかりやすい解説

ひん岩
ひんがん
porphyrite

安山岩の半深成相に相当する岩石。化学組成は安山岩とほぼ等しいが,斑状組織が顕著。斑晶は斜長石と有色鉱物。石基は完晶質で粒度は安山岩よりも大きい。

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