ビエト(英語表記)François Viète

改訂新版 世界大百科事典 「ビエト」の意味・わかりやすい解説

ビエト
François Viète
生没年:1540-1603

16世紀のフランスの法律家,数学者。ラテン名ウィエタFranciscus Vieta。フランス西海岸の町フォントニー・ル・コムトで生まれ,ポアティエの大学で法律を学んだ。1573年に最高法院ブルターニュ管区判事となり,1580-84年の間パリの最高法院の請願書審理官と王室顧問官とを兼ねた。89年以降アンリ4世に仕えた。このころスペインからの暗号文解読した話がある。このように法律家,政治家として忙しい生涯を送ったが,その間1564-68年の4年間と1584-89年の5年間とはその意味ではひまな時期で,この間を数学の研究にささげた。数学の研究は宇宙論に関係の深いものが多く,そのため三角法,球面三角法などに関するものがいろいろあるが,もっとも重要と思われることは代数式の新しい表記を導入し,一般係数代数方程式を扱ったことである。方程式の解法にもよく通じていて,オランダのロマヌスAdrianus Romanus(1561-1625)が提出した45次方程式を解いた話があり,また,次のような三次方程式の解法も与えた。x3+3a2x=2b3を解くのに,xa2y1yとおいてy3についての二次方程式y6+2b3y3a6からyを求めるのである。また円周率πについての次の無限乗積

はビエトの公式として知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビエト」の意味・わかりやすい解説

ビエト
びえと
François Viète
(1540―1603)

フランスの数学者。法律家でもあり、当時のアンリ王室の法律顧問(1580~1602)という激務のかたわら、第一級の数学的業績をあげた。宇宙論、暦の問題などビエトの関連する領域は広いが、数学に限定すると、(1)『解析法入門』In artem analyticen Isagoge(1591)という論著において、彼の創始した記号を用いて、未知量および既知量を記号化し、初めて代数において記号を用いて一般的に推論することを可能にした。その応用として、(2)『方程式の再検改良De aequationum recognitione et emendatione(1615)という論文で、三次および四次方程式の一般的解法と根の公式とを提出した。(3)また上記『解析法入門』のなかで、ギリシア伝承の未知の定理、問題の証明、解法の発見法を代数学にも適用できるように改めた。ギリシアのディオファントスの『数論Arithmeticaはこの時代にようやく理解、評価されるようになったが、ビエトは、彼自身の記号計算が、不定方程式を除いて、どこまでディオファントスを彼の代数学に吸収しえるかを追究することをその目標とした。

[中村幸四郎]

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百科事典マイペディア 「ビエト」の意味・わかりやすい解説

ビエト

フランスの数学者。ラテン名ウィエタFranciscus Vieta。アンリ4世に仕えスペインの暗号を解読。文字記号を組織的に使用し,代数学に新しい道を開き,代数学の父といわれる。また円に内接する正多角形から円周率を求めて,無限積の形で表現,小数点以下10桁(けた)まで算出。
→関連項目代数学

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世界大百科事典(旧版)内のビエトの言及

【円周率】より

…5世紀ころには,πの近似値としてインドのアールヤバタĀryabhaṭaは3.1416を,中国の祖沖之は22/7や355/113を得ている。16世紀には,ルドルフS.von Rudorff(1540‐1610)はπの近似値を小数点以下第35位まで計算し,フランスのF.ビエトは次に示すような公式を得た(図)。17世紀に入って微積分が発見されてからは,のようなπを定積分に結びつける式が得られ,これらを用いて,πを無限級数の和,あるいは種々の形の極限値として表示する式が得られ,πの近似値も精密に計算できるようになった。…

【数学】より

…この世紀は,数学史上,〈英雄の世紀〉とも呼ばれる著しい時代である。
[17~18世紀の数学]
 16世紀のイタリアでは代数学が進んで,三次や四次の代数方程式の解法が得られたことを前に述べたが,それをさらに発展させ新しい時代の代数学を基礎づけたのは,フランスのF.ビエトであった。彼は記号代数を推進し,ことに既知数をも記号で表し,四次までの代数方程式の解法を一般的に述べた。…

※「ビエト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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