フェロニー(その他表記)félonie[フランス]
Felonie[ドイツ]
felony

改訂新版 世界大百科事典 「フェロニー」の意味・わかりやすい解説

フェロニー
félonie[フランス]
Felonie[ドイツ]
felony

封建的主従関係(封建制度)における主君家臣の間の誠実義務違反。ラテン語でフェロニアfelonia。封建的主従関係にある主君と家臣とは,相手方に対し誠実をつくす義務,すなわち,積極的に相手方の利益を図り不利益を避ける基本的な義務を相互に負うほかに,主君は封地(レーン)等を与えて家臣を保護する義務を,また,家臣は主君に対し軍役,参廷等の義務を負う。これらの義務に違反する行為を,これが主君の行為たると家臣の行為たるとの別を問わず,フェロニーと称する。義務違反が重大で悪質なときは,主従関係の一方的解消が結果として生じる。この場合,主従関係の物的側面である封は,家臣の違反に際しては主君に没収され,また,主君の違反に際しては家臣は当該封を上級主君からあらためて受ける。これらの制裁は,正規には,主君または上級主君の封建裁判所で判決される。中世後期以後は,封建制度の弛緩とともに,上述の制裁は緩和される傾向にあった。

 なお,コモン・ローでは,殺人,放火などの財産没収の罰を伴う一群の罪をフェロニーと呼び,それ以下の陪審なしで略式で審理しうる罪と区別した。このような区別は,英米法制定法にも受け継がれ,前者重罪後者軽罪と呼ぶ。
重罪・軽罪
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェロニー」の意味・わかりやすい解説

フェロニー
ふぇろにー
felony 英語
felonia ラテン語

封建領主と家臣との間で、家臣が主君やその家族、あるいは主君が家臣の生命、身体、名誉を侵害した場合、主君が理由なく家臣のレーン(封)を没収した場合、外敵との内通など、広く誠実義務に違反すること。その後しだいに重罪をさすようになり、イギリスでは、コモン・ロー上、謀殺故殺、夜盗、住居侵入、窃盗(せっとう)、重婚、強姦(ごうかん)などが重罪とされた。財産の没収を伴う罪で、もともとフェロニーに対する刑はすべて死刑であり、証人弁護人も許されなかったが、1702年から証人が、1837年から弁護人が認められ、1870年に財産没収が廃止された。1967年には重罪と軽罪の区別も廃止された。アメリカでは州により異なり、重罪は、死刑または州刑務所への拘禁(こうきん)、あるいは、死刑または重労働拘禁で処罰される罪としている。

[佐藤篤士]

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