フェン(読み)ふぇん(その他表記)John B. Fenn

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェン」の意味・わかりやすい解説

フェン
ふぇん
John B. Fenn
(1917―2010)

アメリカの化学者。1940年エール大学で化学博士号を取得。1967年エール大学教授就任、1987年同大学名誉教授。1994年よりバージニア・コモンウェルズ大学教授。

 1988年に、タンパク質溶液を強い電場を使って噴霧することで電荷をもったタンパク質溶液の液滴をつくり、その液滴中の水が蒸発することで自由に浮遊するタンパク質イオンを得る「エレクトロスプレーイオン化法(ESI=Electrospray Ionization)」を開発した。それまでの質量分析は低分子のタンパク質に限られていたが、この方法でイオン化することによって生体高分子の質量分析が可能となった。タンパク質の分析が簡単にできるようになったことで、生体中のタンパク質の構造や機能を知ることができるようになり、医薬をはじめとするさまざまな分野における研究が飛躍的に進んだ。これらの業績により、2002年のノーベル化学賞をK・ビュートリッヒ田中耕一とともに受賞した。

[馬場錬成]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フェン」の意味・わかりやすい解説

フェン
Fenn, John B.

[生]1917.6.15. ニューヨーク,ニューヨーク
[没]2010.12.10. バージニア,リッチモンド
アメリカ合衆国の分析化学者。2002年に「生体高分子の同定および構造解析のための手法の開発」により田中耕一,クルト・ビュートリヒとともにノーベル化学賞を受賞した。フェンと田中は「質量分析のための『脱イオン化法』の開発」を評価された。1940年エール大学で化学の博士号を取得し,企業の研究員を経て 1952年にプリンストン大学で研究を始めた。1967年からエール大学教授を務め,1987年に同大学名誉教授となる。1994年からバージニアコモンウェルス大学の研究教授を務めた。1988年,電荷をもった蛋白質溶液の小さな液滴をつくり,その液体部分が蒸発するにつれて縮み蛋白質イオンとして飛ばせるエレクトロスプレーイオン化法を開発した。以前は大きな分子のイオン化が困難で小さな分子にしか質量分析法を使えなかったが,この開発により,生体高分子をイオン化して電場中で既知の距離を飛ばし,その飛行時間をはかることで質量測定が可能になった。この技術は蛋白質のアミノ酸配列など種々の生体高分子の構造解析に欠かせない分析技術となり,創薬や生物科学研究の進歩に貢献している。

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普及版 字通 「フェン」の読み・字形・画数・意味

【富】ふえん

ゆたかで美しい。〔詩品、序〕元嘉中、謝靈り。才高く詞んにして、富蹤(したが)ひし。固(もと)より已に劉()・郭(璞)に含跨(がんこ)し、潘(岳)・左(思)を轢(りようれき)す。

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【浮】ふえん

表面のあでやかさ。〔顔氏家訓文章〕今の世、相承けて末に趨(はし)り本をて、多し。~時俗此(かく)の如し、安(いづく)んぞ能く獨り(たが)はん

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【誣】ふえん

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