出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
中国の文学理論の書。《詩品》の名を持つ書には2種ある。一つは南朝梁の鍾嶸(しようこう)の著した《詩品》3巻で,6世紀前半に世に出た。これは漢から梁に至る代表的な五言詩の詩人123人を,上中下の品第に格づけして論評を加えたもの。五言詩の繁栄を背景として書かれた評論だが,当世風の技巧に走った詩は好まれず,漢・魏のころの骨っぽいたくましさに溢れた古典的な詩風が追慕されている。最初の本格的な詩論として重要な意義を有し,後世の〈詩話〉の祖とされて,文学評論史の上に大きな位置を占める。いま一つの書は,晩唐の詩人司空図(しくうと)の著になる《詩品》1巻。詩中に表出される情趣を〈雄渾〉から〈流動〉に至る24類に分かって,それぞれの境地を四言12句の韻文にまとめてうたっている。そこから《二十四詩品》の名をもって称されることもある。一種の詩論であるとともに,それ自体がまた一つの文学作品としての鑑賞にたえる特異な性格を持つ。
執筆者:興膳 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中国、梁(りょう)の鍾嶸(しょうこう)の詩論書。3巻。書名はもと『詩評』といわれたらしいが、いまはもっぱら『詩品』の名で知られる。漢より梁初までの詩人123人の五言詩を上・中・下の三品に格づけして批評を加えたもので、簡潔に各人の詩の源流と特色とを論じている。収録の詩人の生年卒年により、制作年代は513年以降と考えられる。その序文で彼自身の文学論を述べ、詩は性情を本として興趣を主とすべきであるとの考えにたち、五言詩の隆盛をみた魏(ぎ)の建安期(196~220)の文学を高く評価し、故事を過度に用いたものや、当時盛んであった音調を重んじる詩風を批判している。その評価については後世異論もあるが、後の詩歌の批評に大きな影響を与え、劉勰(りゅうきょう)の『文心雕竜(ぶんしんちょうりょう)』とともに中国文学評論史上、重要な位置を占める。
[根岸政子]
『興膳宏訳「詩品」(『中国文明選13』所収・1973・朝日新聞社)』▽『高木正一訳『鍾嶸詩品』(1978・東海大学出版会)』
…しかしその反面,屈曲した個人感情,錯雑した事物の姿,激烈な悲喜の情などの表現には,適した形式と言い得る。この点,梁の鍾嶸(しようこう)が《詩品》序において〈五言は文学表現の中枢を占め,多くの文学形式の中では滋味豊かなものである。それゆえ,世俗の歓迎を受けたのである。…
…唐末の戦乱を避けて隠居するが,唐が滅ぶと絶食して死んだ。その著《詩品》は四言詩を用いて〈雄渾〉から〈流動〉まで24種の美的範疇を詠述する。現存する数少ない唐代の詩論書で,厳密な理論体系こそ持たないが,南宋の厳羽や清の王士禎(おうしてい)などの後世の詩論はもちろん,画論や書論にも大きな影響を与えた。…
…全文が四六文で書かれている。鍾嶸(しようこう)の《詩品(しひん)》は漢以来300年間の五言詩作家の系統的な一覧表だが,個々の作家に対する当時の評価の高低が示され,貴重な資料である。2書とも6世紀の初めの著作であった。…
※「詩品」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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