(読み)フ

デジタル大辞泉 「富」の意味・読み・例文・類語

ふ【富】[漢字項目]

[音](呉) フウ(漢) [訓]とむ とみ
学習漢字]4年
〈フ〉
財産や物がたっぷりとある。とむ。「富強富豪富裕殷富いんぷ貧富豊富
財産でいっぱいに満たす。とます。「富国強兵
豊かな財産。とみ。「富力巨富国富
富士山。「富岳
〈フウ〉とむ。「富貴ふうき・ふっき
〈とみ〉「富籤とみくじ富札
[補説]「冨」は俗字人名用漢字
[名のり]あつ・あつし・さかえ・と・とます・とめり・とめる・とよ・ひさ・ふく・みつる・ゆたか・よし
[難読]富山とやま

とみ【富】

集めた財貨。財産。「巨万のを築く」
経済的に価値のあるもの。資源。「自然界の
富籤とみくじ」の略。
[類語](1資産財産恒産私財家財身代資財財貨貨財私産家産

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精選版 日本国語大辞典 「富」の意味・読み・例文・類語

とみ【富】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「とむ(富)」の連用形名詞化 )
  2. とむこと。
    1. [初出の実例]「まねかねどあまたの人のすだくかなとみといふものぞたのしかりける」(出典:兼盛集(990頃))
  3. 豊かな財産。集積した財貨。
    1. [初出の実例]「新(にひ)しき富(トミ)入来(きたれり)都鄙(ひな)の人、常世の虫を取りて、清座(しきゐ)に置く」(出典日本書紀(720)皇極三年七月(岩崎本室町時代訓))
  4. とみくじ(富籤)
    1. [初出の実例]「打込んで富はあなたのおあてがい」(出典:雑俳・西国船(1702))

ふ【富】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 形動 ) 豊かなこと。財産があること。金持であること。また、そのさま。富裕。
    1. [初出の実例]「後ち一女の富なる者を娶り」(出典:花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉一六)
    2. [その他の文献]〔論語‐学而〕
  3. とみ。財貨。財産。〔書経‐呂刑〕

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普及版 字通 「富」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 12画

[字音] フ・フウ
[字訓] とむ・ゆたか・さかん

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
声符は(ふく)。は腹の大きい酒の形。〔説文〕七下に「備はるなり」と備(ふく)の声を以て解する。(福)も同声の字。金文にに作るものがあり、富は神に多く供えることを原義とする字であろう。〔論語〕には、富を斥け、賤しむ語が多い。

[訓義]
1. とむ、おおい、ゆたか。
2. さかん、あつし。
3. さいわい。

[古辞書の訓]
名義抄〕富 トム・ミツ・サイハヒス

[語系]
富・piukは同声。備bukは(えびら)を負う形の字であるが、声義に通ずるところがある。

[熟語]
富安・富・富貴・富益・富・富衍・富翁・富家・富姦・富給・富彊・富驕・富強・富窟・富戸・富賈・富厚・富豪・富骨・富才・富歳・富士・富貲・富児・富室・富実・富者・富寿・富庶・富商・富饒・富殖・富人・富盛・富説・富贍・富羨・富足・富族・富都・富年・富博・富繁・富備・富民・富・富有・富祐・富裕・富予・富余・富利・富隆・富力・富麗・富禄
[下接語]
安富・殷富・栄富・富・家富・該富・姦富・奇富・貴富・巨富・彊富・驕富・窘富・富・宏富・豪富・国富・財富・侈富・資富・辞富・取富・昌富・饒富・贍富・多富・貪富・致富・都富・博富・繁富・美富・貧富・豊富・暴富・末富・雄富・麗富

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改訂新版 世界大百科事典 「富」の意味・わかりやすい解説

富 (とみ)
wealth

富には,分かちがたい二つの要因が関係している。それは一つには幸福,安寧の状態であり,快く安定していることである。したがって,衣食住にかかわる物財が富の条件として必須ではあるが,それ以上に,精神的にどう思うかも大きい要素である。さまざまな欲望を抑制し秩序づけ,この抑制・秩序に意味・目標を与え,価値づけする精神作用が大きいのである。それは各人に固有な具体性を帯びている。〈賢者だけが富者だ〉(キケロ)といった逆説が生まれるゆえんである。語源からいっても,漢字の〈富〉は家中に酒の満々たる酒樽(畐(ふく)は酒樽をかたどっている)がいっぱいにあるということを示し,また英語の〈wealth〉はwell-beingという意味であって,いずれも快の安定的に大きい状態を示唆している。

 これだけでなく,富は他に対する優越の関係をも示している。とくに,宝物,貨幣,武器など威力・威信財の所有に関係する。所持しているか否か,どちらが多く保有しているかなど,相対的関係が富の問題である。なにが威信財であるかは社会によって大きく異なっていることがあるが,一社会の中にあっては人々のあいだの比較関係を含んでおり,富は客観的な量によって規定されている。それゆえ富の取得をめぐって人々の生は競争的要素を含むことになる。この点で富は権力,名誉と類似するとともに,富によって権力や名誉を得たり,権力,名誉によって富を得たりというように,富,権力,名誉は相互・互換関係にある。近代ヨーロッパ語のrichesse(フランス語),Reichtum(ドイツ語),richness(英語)のそれぞれの語根は,その語源をさかのぼれば古くは優越,威力,権勢の関係を表していたといわれている。

 富を構成するこれら2要因は,ほかに優越しなければ幸福になれない,あるいは互いの物質的生活を適度に確保してやるのでなければ優越,権勢の関係を保つことはできない,といったように,互いに前提しあっている。しかし貨幣経済の発達,資本主義,産業社会の形成は,後者にウェイトをおいた富の観念を普及させて制度化した。そこでは,さまざまの財はそれぞれの交換価値(価格)に擬して富として評価されるようになっただけでなく,貨幣自体が富そのものだと考えられもするようになった。さらに貨幣が容易に広く流通するようになるため,富は広く多くの人々に分散,保有されるようになり,流動性をもつことになった。中世ヨーロッパでは土地を中心に固定的な富の観念が支配的であったが,貨幣経済にあっては土地も売買されるものとして価格評価され,富の,多くのうちの一項をなすにすぎないものとなる。富をめぐる競争は貨幣をめぐる競争となり,富の分布の平準化を伴いつつ,広く激しくなる。それは量的性格を強め客観性を帯びるが,同時に,富の観念を形成する具体的で個性的な側面は希薄となり,質を失い,単なる量にのみ関心が集中する。しかも量の基準をなす貨幣価値までも変化にさらされている現代,富は,国富の推計に表れているように,量としてすらもあやふやである。
執筆者:


富(旧村) (とみ)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「富」の意味・わかりやすい解説


とみ

岡山県中北部、苫田郡(とまた)にあった旧村名(富村(そん))。現在は鏡野町(かがみのちょう)の西部を占める地域。旧富村は2005年(平成17)奥津町上斎原(かみさいばら)村とともに鏡野町と合併して、新たに鏡野町となった。中国山地にあり、旭(あさひ)川支流の目木(めき)川と余(よ)川の流域を占める。地域の大部分が林野で、近世の鉄穴(かんな)流しの跡があり、また木地(きじ)屋敷という木地師集落の地名を残す。旧森江家住宅(国の重要文化財)は17世紀後半ごろの三間取り農家の遺構。

[由比浜省吾]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「富」の意味・わかりやすい解説


とみ

岡山県北部,鏡野町西部の旧村域。中国山地にある。地名はかつて良質の砂鉄が豊富にとれたことに由来する。 1889年村制。 2005年奥津町,上齋原村,鏡野町と合体し鏡野町となった。林業が行なわれ,木材,ミツマタを産する。畜産は和牛に代わって近年は乳牛を導入。景勝地白賀渓谷があり,湯原奥津県立自然公園に属する。国の重要文化財である旧森江家住宅は一般公開され歴史民俗資料館となっている。

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