改訂新版 世界大百科事典 「フクロモグラ」の意味・わかりやすい解説
フクロモグラ (袋土竜)
marsupial mole
Notoryctes typhlops
有袋目フクロモグラ科の哺乳類。姿は食虫類のモグラ類,とくにキンモグラに似る。腹部に乳頭2個を備えた育児囊をもつ。育児囊の口は後方に開く。モグラ類同様,体は円筒型。目と耳介は退化し,四肢は短く,前足がシャベル状に大きく発達する。尾は短い。体色はふつう薄い黄色だが,ほとんど白色に近いものから濃いオレンジ色のものまである。体長14.8~18cm,尾長2.1~2.6cm,体重40~66g。オーストラリア南部と中央部の乾燥地帯に生息し,柔らかな砂地に単独ですむ。地下7~8cmほどのところにトンネルを掘り進み,昆虫,ミミズなどを捕食する。掘った砂を後足でけって後方に送るために,トンネルは,食虫類のモグラのそれのように一定の通路として残ることはない。雨後にはしばしば地表に出て歩くことがあり,砂上に足と尾の痕跡が3本の筋となって残る。1子を育児囊に入れた雌がとらえられた例があるほか,繁殖についてはほとんど知られていないが,子がある程度成長したあとは,地中深くにつくられる巣の中で育てられるものと思われる。
→有袋類
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報