翻訳|chromosphere
ふだん肉眼で見える太陽の光球のすぐ外側に位置する厚さ2~34kmの薄い層のこと。皆既日食のとき,皆既の直前と直後にコロナの内側に弧状に赤く輝いて見える。赤く見えるのは彩層が水素のHα線(波長6563Å)を強く放射するからである。Hα線だけを通すリヨ・フィルターで太陽面を見ると,たいへん非均質な彩層の構造を見ることができる。彩層の構造は太陽面に突き刺さった針状のスピキュール群とその間の温度約6000Kのガス領域からなる。非均質な構造は磁場の分布によるもので,スピキュールは太陽全面を網目状に覆う磁力線に沿って起こるジェット流である。太陽大気の温度は光球の6000Kから彩層下部で4300Kまで下降するが,彩層で反転して増大し6000Kから1万Kになる。彩層上端ではわずか数十kmの薄い遷移層を通じて温度は100万Kまで急上昇しコロナになる。この大きな温度勾配のためコロナから彩層に向けて強い熱伝導流が生じ,この熱流は彩層上端で水素のライマン線(波長60~120nmの極紫外線)を主とする電磁波として放射される。上部彩層の密度は1cm3当りの原子数で1012個ほどである。彩層では3分から5分を周期とするガスの振動が絶えず起きているほか,毎秒10kmくらいの乱流運動,スピキュール中のジェット流とたいへん乱れた激しい運動が見られるが,これらは太陽表面下の対流に源を発すると考えられている。彩層で温度が上昇する理由は,これらの運動や対流層から発せられる音波が熱化することに起因すると考えられる。太陽より低温の星および少し高温のF型の星にはすべて彩層が見つかっている。これらの星はみな表面近くに対流層をもっている。彩層は対流層に源を発する星の表面活動の現れとみなせる。
執筆者:田中 捷雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
太陽光球の外側にある厚さ2000~3000キロメートルのガス層。光球に比べて磁場の影響を受けやすいので、磁場に起因する太陽の活動現象を調べるのに適している。皆既日食のとき、皆既の直前や直後に太陽を隠す黒い月の縁に赤く輝いて見える。水素の赤い輝線(波長656.3ナノメートル)を強く放射するため、彩層は赤く彩られて見える。太陽より低温の星やF型星にも彩層があり、星の活動現象を調べるのに役だっている。太陽と同じG型星でも自転速度の速いものや遅いものがある。速く自転している星は彩層がより活発であり、誕生して間近の若い星である。星はコロナから風を放出し、時間がたつとともに、自転が遅くなり彩層の活発さも弱くなる。
[日江井榮二郎]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…光球の最下層の温度は6400K,最上層では約4300Kである。その上に彩層と呼ばれる層があるが,ここでは逆に上の層ほど高温になっている。また光球の密度はおよそ10-7g/cm3で,圧力は105dyn/cm2,すなわち約0.1atmである。…
…事実対流層の底は今まで考えられていたよりずっと深く,半径の7/10まで達していなければならないし,またそれより中の太陽の部分は表面よりも速く自転しているのではないかというような考えも出始めている。
[彩層]
皆既日食のとき,太陽が月に隠されていき,ダイヤモンドリングが消えた途端に,接触点に近い月の周囲に沿って紅に輝く薄い層が見える。これが彩層である。…
※「彩層」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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