日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
フランツ・フェルディナント
ふらんつふぇるでぃなんと
Franz Ferdinand
(1863―1914)
オーストリア・ハンガリー帝国の皇位継承者。フランツ・ヨーゼフ皇帝の甥(おい)。軍人としての教育を受け、1898年ルドルフ皇太子の死去により皇帝継承者となった。軍高級職を歴任したが、身分違いの結婚などによって宮廷での評価は低く、政治決定過程からは遠ざけられた。帝国の将来構想として、ドイツ系、ハンガリー系民族と並んで南スラブ系民族の自治を認める三元主義的編成を考えていたが、その他の点では保守的政治志向をもっていた。1914年6月28日、軍事演習を視察中、サライエボでセルビアの民族主義者に狙撃(そげき)され、妻とともに死亡した。この事件は第一次世界大戦の直接の契機となった。
[木村靖二]