日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブラジリア」の意味・わかりやすい解説
ブラジリア
ぶらじりあ
Brasília
ブラジルの首都。ブラジル南東部の大西洋岸から約1000キロメートル内陸に建設された計画都市である。陸路では、サン・パウロから1015キロメートル、リオ・デ・ジャネイロから1129キロメートル、また都市の創設と同時に開通したベレン・ブラジリア道路を通じてベレンからは2118キロメートルの距離にある。人口205万1146(2000)。七つの行政地域とともに、面積5822.1平方キロメートルの連邦地区(ディストリート・フェデラルDistrito Federal)を構成している。連邦地区内には中心部から20~50キロメートル圏内に、タグアティンガなど10以上の衛星都市が分布している。トカンティンス、サンフランシスコ、パラナの三大河川の分水界付近、ブラジル高原中央部の標高1100メートルの高所に位置し、年平均気温は20.7℃、気温年較差3℃と比較的しのぎやすい気候下にある。年降水量は1478.1ミリメートルであるが、雨期(10~4月)と乾期(5~9月)が明確に分かれており、周囲にはセラード原野が広がっている。
ブラジルでは、すでに18世紀からブラジル高原中央部に新首都を建設しようとする動きがあり、1891年の第一次共和国憲法にこの方針が明記され検討が続けられてきた。1956年、ジュセリーノ・クビチェック大統領が新首都建設を議会に提案し承認され、都市の基本プランが公募された。当選したルシオ・コスタのプランに基づき翌57年に建設に着手し、60年4月21日、それまでのリオ・デ・ジャネイロにかわる首都として発足した。市街地は、十字架のイメージから導かれた航空機の形にデザインされ、東西、南北二つの軸から構成されている。また、都市内諸機能の空間的分離、人と車の分離など都市設計上の新しい概念にも注意が払われている。
東方、パラノア川をせき止めた人造湖に向いた航空機の胴体部にあたる東西軸には、国会議事堂、大統領府、最高裁判所が集まる三権広場に始まり、モヌメンタル大通りに沿って東から西へ、政府官庁群、教会、国立劇場と銀行地区、ショッピング・センターとバス・ターミナル、商業地区、ホテル地区、マスコミ施設(テレビ局など)、スポーツ施設、地方行政機関、軍事施設、軽工業地区が並んでいる。建築家オスカー・ニーマイヤーの設計による斬新(ざんしん)なデザインの建物が多い。一方、弓なりに湾曲した翼の部分にあたる南北軸には、平行に走る大小7本の道路に沿って集合住宅群が配置されている。この都市は1987年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[松本栄次]