電気回路で直列接続や並列接続とみなせない回路をいう。抵抗、インダクタンス、キャパシタンス(静電容量)などの回路素子の値や、周波数の測定、計器の温度補償、制御用機器の各種検出部などに広く利用され、重要な性質をもった回路である。
(1)ホイートストンブリッジWheatstone bridge 5個の抵抗が接続されたブリッジ。ブリッジ回路のうちもっとも基本となるもの。この回路でP、QおよびRを可変抵抗とし、これを調整して、rのかわりに接続した検流計の指示をゼロにすると(このときブリッジは平衡したという)、四辺の各抵抗の間にはPR=QXの関係が成り立つ。この関係をブリッジの平衡条件といい、P、QおよびRの値が既知ならば、X=(P/Q)RとしてXの値を求めることができる。この原理を使って、中位抵抗(1~106オームぐらいまで)を精密に測定する装置がPO箱である。
(2)すべり線ブリッジ ホイートストンブリッジの既知抵抗QとRとを共通のすべり抵抗線としたブリッジ。原理はホイートストンブリッジと同じである。標準抵抗Sの値を階段的に変え、P/Qの値を連続的に変えてブリッジを平衡させる。接触子が左端から長さlの位置でブリッジが平衡したとすると、未知抵抗Xの値はX=(L-l)S/lとして求めることができる。すべり線に沿って(L-l)/lの値が目盛ってあれば、平衡した点のこの値にSの値を乗ずれば、Xの値がただちに求められる。接触子がすべり線の中央付近で平衡するときの誤差がもっとも小さい。
(3)コールラウシュブリッジKohlrausch bridge すべり線ブリッジの電源を可聴周波数の交流(およそ1キロヘルツ)とし、検出器も受話器(レシーバー)やマジックアイ(同調指示管)としたもの。電解液の抵抗率測定や大地の導電率、接地抵抗などのように直流電源で測定すると、電極面に逆起電力を生ずる成極作用が現れたり、気泡やイオンの層を生じたりして、正確な測定ができない場合に威力を発揮する。
(4)ダブルブリッジdouble bridge ホイートストンブリッジで低抵抗(0.1オーム以下)を測定すると、接触抵抗の影響によって正確には測れない。このために考案されたのがダブルブリッジで、上下二つの部分でブリッジを形成しているのでこの名がある。Q/P=q/pの関係をつねに成立させながら、各辺の抵抗を調整して検流計Gの指示をゼロとすると、未知抵抗Xの値はX=(Q/P)Sで得られる。10-4オーム程度までの低抵抗が、高い精度で測定できる。
(5)交流ブリッジA.C. bridge インピーダンスの値や周波数を正確に測定するブリッジ。測定対象により各種のものがある。交流ブリッジは、位相と大きさの二つの量が平衡しないと検出器がゼロを指示しない。したがって直流ブリッジの場合に比べ、ブリッジを平衡させる操作が一般に複雑である。
[高尾利治]
平衡しているホイートストンブリッジで、一辺の抵抗がわずかでも変化すると、平衡が破れて中央の枝路に電流が流れる。したがって、逆にこの電流から抵抗変化を検出したり、あるいは任意の物理量の変化を抵抗変化に変換する素子を用いると、この電流からその物理量の変化を知ることができる。
熱線風速計はその一例で、直径0.01~0.5ミリメートルぐらいの白金線を熱線とし、ブリッジの一辺に組み込み、電流を流して加熱した状態で平衡させておく。次にこの熱線を気流や水流中に置くと相対速度によって放熱作用が異なるので、熱線の温度が変わり、その結果抵抗も変わって平衡が破れ、検出器に電流が流れる。あらかじめ目盛っておけば、この電流から相対速度を知ることができる。
抵抗線ひずみ計も同様で、ひずみゲージをブリッジの一辺に組み込み、ゲージのひずみによる抵抗変化を熱線風速計の場合と同じようにブリッジで検出し、引張り力や圧縮力を測定する。
[高尾利治]
4個の節点とそれらのすべてを直接結ぶ6本の枝とからなる電気回路。回路が十文字に交差して,橋をかけたようになることから名付けられた。図のa,b,cはすべて同じ回路であるが,習慣上は目的によって描き分けられている。aは測定用ブリッジ回路で,A,B,C,DのインピーダンスをそれぞれZA,ZB,ZC,ZDとすると,ZAZC=ZBZDのとき検出器Fの電流が0となることから,未知インピーダンス(例えばZD)が求められる。bはA~Dを整流ダイオードまたはサイリスターとする整流回路,cは平衡型フィルターである。dはこれらとは異なり,電源と負荷とが一端を共通(節点4)にできる電子回路向きのブリッジで,不平衡型フィルターとして用いられる。上記の回路はすでに述べた利用法のほか,各種の高感度検出器,電子スイッチ,移相回路,復調回路などにも用いられている。
→交流ブリッジ
執筆者:曾根 悟
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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