プリピャチ川(読み)ぷりぴゃちがわ(その他表記)Припять/Pripyat'

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プリピャチ川」の意味・わかりやすい解説

プリピャチ川
ぷりぴゃちがわ
Припять/Pripyat'

ベラルーシウクライナを流れるドニエプル(ドニプロ)川の最大の支流。ウクライナ、コベリ市北西の標高152メートル地点を水源とし、ベラルーシをほぼ東流してふたたびウクライナに入り、ドニエプル川をせき止めたキーウ貯水池に北西端から流入する。延長775キロメートル、流域面積11万4000平方キロメートル。縦断勾配(こうばい)はきわめて小さく、大部分が航行可能。12月~3月に結氷し、春は雪解け水で氾濫(はんらん)する。流域はマツ林と砂堆(さたい)と湿地とが交互に続くポレシエПолесье/Poles'eとよばれる景観をみせている。ドニエプル・ブク運河でブク川(西ブク川)と、ドニエプル・ネマン運河ネマン川と結ばれ、後者はドニエプル川が流入する黒海と北のバルト海とを結ぶ。中流にはピンスク、モジリなどの河港がある。

 キーウ貯水池への流入点にチェルノブイリЧернобыль/Chernobïl'(人口1万2500、1986。現、チョルノービリ)の町があり、その上流15キロメートルに、1986年4月に大事故を起こしたチェルノブイリ原子力発電所がある。発電所の上流3キロメートルのプリピャチ(人口4万9000、1986)はチェルノブイリとともに原子力発電所労働者の住宅地区であったが、事故により全住民が避難、以後少なくとも8~10年間住宅建設が放棄された。なお、チェルノブイリ原子力発電所は2000年12月に全面閉鎖された。

[津沢正晴]

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改訂新版 世界大百科事典 「プリピャチ川」の意味・わかりやすい解説

プリピャチ[川]
Reka Pripyat'

ベラルーシ,ウクライナにまたがり,ドニエプル川の右岸に注ぐ大きな支流。長さ761km。流域面積は11万4300km2で,この程度の長さの川としては異常に広く,支流の数も多い。はじめウクライナの北西端(ベラルーシ,ポーランドとの国境付近)の標高約152mの丘陵から北流,ベラルーシ南部のポレシエ地方で数十の支流を合わせ,みずから広大な湿地をつくって東に流れ,再びウクライナに出てキエフの上流につくられたキエフ貯水池(ドニエプル川)の右岸へ注ぐ。上流のピンスク湿地,中流のポレシエ湿地では本流の河道はしばしば変わり,湿地で分流・合流をくり返す。とくに春の雨と融雪水により大きな湛水をひきおこす。12月中旬~翌年3月下旬に結氷する。キエフ貯水池から600kmほど船が遡航できる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プリピャチ川」の意味・わかりやすい解説

プリピャチ川
プリピャチがわ
reka Prypyat'; reka Pryp'yat

ウクライナとベラルーシを流れる川。Pripet,Pripyat,Pripiat,Pripetsとも綴る。ドネプル川(ドニプロ川,ドニャプロ川)最大の支流で,全長 775km,流域面積 11万4300km2。ウクライナ北西部のポーランド国境付近で源を発し,ウクライナからベラルーシを東流する間に平坦で森林に覆われたプリピャチ湿地を通り,ベラルーシのマズィルで南東方向に向きを変えて再びウクライナに入り,キーウ人造湖でドネプル川と合流する。ベラルーシのピンスクまで船舶の航行が可能で,そこからドネプル―ブーグ運河を挟んでブーグ川と結ばれる。流域に広がる湿地の多くは埋め立てられて農地となった。

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