日本大百科全書(ニッポニカ) 「プルチ」の意味・わかりやすい解説
プルチ
ぷるち
Luigi Pulci
(1432―1484)
イタリアの詩人。フィレンツェの没落貴族の家に生まれる。1461年からメディチ家の宮廷サロンに加わり、俗語による詩作を介して年若いロレンツォ・デ・メディチと友情を結んだ。しかしやがて、宮廷内で台頭してきたプラトン・アカデミア派と対立し、主君ロレンツォもネオプラトニズモへの傾倒を深めたため、73年以降は宮廷を離れてフィレンツェの傭兵(ようへい)隊長に仕えた。作品にはソネットなどの小品もあるが、15世紀フィレンツェの溌剌(はつらつ)たる市民文学の伝統に根ざした彼の詩精神は、半生を費やした大作『モルガンテ』28歌(1483)において存分に発揮された。これは、騎士オルランドが活躍する中世騎士道物語を下敷きにして、そのうえに巨人モルガンテをはじめ独創的な登場人物や挿話を加え、さらに口語から文語にわたる多彩な語彙(ごい)と表現を駆使した一大パロディーで、後のフランスの物語作家ラブレーにも大きな影響を与えた。なおこの作品のために死後埋葬に際し異端の扱いを受けた。
[林 和宏]