プロキオン(読み)ぷろきおん(英語表記)Procyon

翻訳|Procyon

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プロキオン」の意味・わかりやすい解説

プロキオン
ぷろきおん
Procyon

こいぬ座のα(アルファ)星の固有名。この星とベテルギウスシリウスで「冬の大三角」をつくる。名前はギリシア語で「イヌの前に」の意で、おおいぬ座のシリウス(Dog Star)に先駆けて東天に昇ってくることに由来する。アラビア名はアル・シァラ・アル・シャミイアAl-She'ara Al-Shamiaで「北のシリウス」の意。

 2000年の天球上の位置は、赤経7時39分18秒、赤緯プラス5度13.5分。毎年1月15日ごろ真夜中に南中する。実視等級0.36等で全天で8番目に明るい。色指数(BV)はプラス0.42等(天体の色を表す指標一つで、青色B等級から実視V等級を引いたもの)。黄色に輝くスペクトル型F5Ⅳ~Ⅴの準巨星または主系列星。視差は285.9ミリ秒角で地球からの距離11.4光年の近距離星。質量は太陽の1.50倍で表面温度は6500K(ケルビン)。干渉計で星の角直径が5.2ミリ秒角と測定された。半径は太陽の2.1倍である。光度は太陽の7.2倍。自転速度vv sin i=5.7キロメートル/秒(iは地球から見た星の自転軸傾斜角)。固有運動は大きく、位置角214.7度の方向に1258.5ミリ秒角/年で動く。

 固有運動のふらつきから、1840年に暗い伴星の存在が予想され、1896年に10.7等の伴星(プロキオンB)が発見された。シリウスの伴星とともに有名な白色矮星(わいせい)で、質量は太陽の0.60倍、半径は太陽の0.0123倍で地球よりも少し大きいだけである。平均密度は大きく、1立方センチメートルあたり0.45トンにもなる。表面温度は7740K。主星と伴星は、周期40.38年、楕円(だえん)軌道の離心率0.365、軌道傾斜角(地球から見た公転軸の傾き)31.9度で共通重心の周りを公転している。主星の公転軌道長半径1180ミリ秒角。連星系の重心の視線速度はマイナス4.12キロメートル/秒で、主星の視線速度は公転に伴い重心の視線速度を中心に振幅1.70キロメートル/秒で周期的に変化している。主星については精密な分光測光がなされており、さまざまな振動モード解析や化学組成解析が行われている。あまり活発でないコロナからX線が観測されている。

[山崎篤磨]

『桜井邦朋著『星々の宇宙――その現代的入門』(1987・共立出版)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プロキオン」の意味・わかりやすい解説

プロキオン
Procyon

こいぬ座のα星 (α-CMi) の固有名。最輝星の一つ。連星で,主星は光度 0.35等,スペクトル型は F5。伴星は 10.7等の白色矮星。地球からの距離は約 11光年。色白の和名がある。

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