翻訳|white dwarf
水素核融合を行っている普通の矮星が赤色であるのに対し、高温で白っぽく輝く特異な矮星。太陽質量の約8倍より小さい星が、AGB段階(漸近巨星枝(ぜんきんきょせいし))で水素を多く含む外層をほとんど失い中心核だけとなり、核融合反応が行われていない星である。内部は原子が壊れて電子の縮退圧で支えられ、構造が温度にほとんど依存せず、したがって重力収縮をしないでゆっくりと冷えて暗黒星となっていく運命にある。
白色矮星は1925年にシリウスの伴星としてアダムズにより発見されたが、発見より以前に理論的に存在が予測されていたもので、その強い表面重力は一般相対論的赤方偏移の検証に役だつものと期待された。アダムズは赤方偏移を検出したとしたが、現在では疑問視されている。
白色矮星の代表例とされるシリウスの伴星は太陽とほぼ同じ質量をもつが、その半径は太陽の100分の2以下であって、平均密度は1立方センチメートル当り400キログラムもある。また表面温度は約1万5000Kと高温であるが、光度は太陽の100分の1程度である。平均的な白色矮星は、質量が0.6太陽質量、半径が100分の1太陽半径、表面温度が1~10万K、表面重力が太陽表面重力の1万倍である。
今日では非常に多くの白色矮星が知られている。その多くは紫外超過星(通常の星に比べて紫外域の放射量が強い星)の探査や、固有運動の大きな星の探査によって検出されたもので、この両方の探査で共通に検出されるものの大部分が白色矮星である。スペクトルによってDA型、DB型、DC型、DO型、DZ型、DQ型などに分類されるが、これらは、水素線だけが顕著なDA型、中性ヘリウムだけが強いDB型、ほとんど吸収線がみられないDC型、電離ヘリウムの強いDO型、金属線だけがみえるDZ型、炭素原子や炭素関連分子の線が強いDQ型など、化学組成の相異によるものと考えられている。白色矮星には周期100から1000秒で変光を示すものが多い。これは薄い外層が非動径振動(池に立つさざ波のような波)の重力波が励起されたものと考えられている。
[小平桂一・安藤裕康]
太陽程度の質量が地球程度の大きさの中に詰め込まれている星。星の表面温度は1万K以上でその色は青白いが,なにぶん小さい星なので暗い星である。シリウスの伴星をはじめとし,約500個が見つかっている。質量のわりに半径がたいへん小さいので,星の内部は1cm3当り1万gから10億gという高密度になっている。このような状態では,電子の縮退という量子力学的現象が,星という超マクロな場で直接に現れることになり,この点でも興味ある天体である。電子が縮退した状態では,その圧力は温度にはよらず密度だけで決まる。そのような圧力で支えられる星の質量は太陽の1.4倍以下であり,これは発見者の名まえをとってチャンドラセカール限界と呼ばれている。白色矮星の内部ではもはや核反応は起こっていない。星は内部にある熱エネルギーを放出しながら光り,しだいに冷えていく。白色矮星の起源にはいくつかの場合がある。生まれたときの星の質量がチャンドラセカール限界以下だと星は白色矮星となって死ぬ。質量がそれ以上であっても太陽の8倍以下の星では,星が進化して赤色巨星になったときに,その膨らんだ外層が星の外へ流出してしまい,後に残された中心核は白色矮星となる。二つの星が互いに接触するほど近くにあって共通重心のまわりを公転している近接連星では,星の進化の途中で一方の星から他方の星へ物質交換が起こり,中心核はむき出しになって白色矮星になる場合がある。これらの星の中心核では水素はすでに消費されつくし,ヘリウム,または炭素と酸素になっている。白色矮星のスペクトルにも水素が見られるが,これは表面にあるほんのわずかな水素の薄皮のためである。近接連星系の中にある白色矮星は,主星といろいろな相互作用をし,興味ある天体となる。新星,新星型変光星,ある種のX線連星などである。場合によっては超新星になることもある。
執筆者:杉本 大一郎
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(2015-10-28)
…原子核エネルギーの燃料ともいうべき水素が十分にある間は主系列星として半径や明るさを変えないが,中心部で水素が消費され,その燃えかすであるヘリウムなどが増えると半径が大きくなり赤色巨星,超巨星へと進化する。最終的には,高密度の残骸ともいうべき白色矮星(わいせい),中性子星,ブラックホールのいずれかを残すか,または何も残さず全質量を星間ガスに還元するかであると考えられている。二つの星がごく接近した連星として誕生すると質量交換によってさまざまな変化を生ずる。…
※「白色矮星」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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