インターネット上で名誉毀損(きそん)や著作権・プライバシー侵害などが起きた際、被害者が侵害情報の削除や発信者情報の開示を請求できると定めた法律。接続事業者(プロバイダー)やSNS事業者などの特定電気通信役務提供者は、侵害情報を削除したり、発信者の情報を開示しても、賠償責任を負わないと明記している。正式名称は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(平成13年法律第137号)。2001年(平成13)成立、2002年施行。「プロバイダー責任制限法」ともよばれる。被害者の権利や名誉を守ると同時に、インターネットの普及を阻害しないよう、特定電気通信役務提供者の負う賠償責任を限定する内容となっている。
ネット掲示板などに権利侵害情報が掲載された際、被害者およびその代理人(弁護士など)は、情報発信者がわからない場合、特定電気通信役務提供者に侵害情報の削除を要請できる。同法では、要請を受けた特定電気通信役務提供者が、発信者に照会し、7日間経過しても発信者から反論がない場合、権利侵害情報の削除や公開停止措置を認めると定めている。削除措置などでかりに発信者に損害が生じても、特定電気通信役務提供者は民事上の賠償責任を負わない。ただし、削除・公開停止要請に強制力はなく、削除するかどうかは特定電気通信役務提供者の判断に任される。被害者は損害賠償請求をするなどの正当な理由があれば、発信者の氏名、住所、メールアドレス、電話番号などの情報の開示を特定電気通信役務提供者に請求できる。ただし、実際に発信者情報を開示するかどうかは、特定電気通信役務提供者の判断に任されている。
同法施行後も、司法手続中に権利侵害情報が拡散してしまうなどの被害は絶えず、関連法の整備が続いている。政府は私的な性的画像をネット上に公開するリベンジポルノの横行に対し、2014年に「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(リベンジポルノ被害防止法)」(平成26年法律第126号)を制定し、プロバイダー責任法で規定した7日間の照会期間を2日間とする特例を設けた。2022年(令和3)施行の改正プロバイダー責任法では、従来、接続事業者とSNS事業者などそれぞれに開示請求が必要だった複数の裁判手続を1回に簡素化する仕組み(非訟手続)を導入。1年半ほどかかった手続期間を半年以内に短縮できるようにしたうえ、必要な通信記録を保全するため消去禁止命令規定なども設けた。さらに総務省の有識者会議などからは、より迅速に権利侵害情報を削除するため、裁判外紛争解決手続(ADR)を活用すべきだとの意見が出ている。
[矢野 武 2023年4月20日]
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