日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベイン」の意味・わかりやすい解説
ベイン
べいん
John Robert Vane
(1927―2004)
イギリスの薬理学者。バーミンガム郊外のウースターシャーに生まれる。バーミンガム大学で化学を学ぶ。卒業後にオックスフォード大学に進み、薬理学を専攻、1953年博士号を取得した。同年渡米してエール大学の薬理学助教授となったが、2年後にイギリスに戻り、ロンドン大学の基礎医学研究所の講師につき、のち実験薬理学教授に昇進した。18年間研究所に在籍したが、1973年に製薬会社が運営するウェルカム財団の研究・開発部長に転じた。ロイヤル・ソサイエティー(王立協会)、アメリカ科学アカデミーなど多くの学術団体の会員になった。1993年(平成5)には聖マリアンナ医科大学(川崎市)の客員教授を務めた。
生理活性物質であるプロスタグランジンに注目し、その生理学的研究を進めた。1960年代に、微量物質の作用を調べるための感度のよい生物検定法を発明し、この方法を用いて、1971年にアスピリンによってプロスタグランジンの生成が抑制されることをつきとめた。さらに1976年に血小板の凝集作用を阻止するプロスタグランジンI2(プロスタサイクリン)を発見した。これらの一連の業績によって、1982年にノーベル医学生理学賞を受賞した。プロスタグランジンの先駆的研究を行ったスウェーデンのベルイストローム、サミュエルソンとの共同受賞であった。
[編集部 2018年11月19日]
『Nobel Prize Winners(1987, H.W.Wilson, New York)』