苦灰石,白雲石ともいう.カルシウムとマグネシウムの複炭酸塩CaMg(CO3)2,またこれを主成分とする岩石.方解石と似た構造だが,Caの位置にMgが入るので対称が2/mからに下がる.ドロマイト岩の主成分鉱物として産出し,層状鉱床をつくる.わが国では,ドロマイト鉱床は石灰岩を伴っている.CaCO3から交代してできた二次鉱物である場合が多い.人工的には,CO210 atm 以上のもとで,Ca,Mgの炭酸塩溶液を常温以上に保って得られる.三方晶系,空間群R,りょう面体,双晶面{0001},へき開{101}完全.方解石と共軸成長している場合が多い.硬度3.5~4.密度2.85±0.01 g cm-3.Mgのかわりに FeⅡ,MnⅡが増すにつれて,比重,反射率,屈折率が増加する.二軸性,負.MgのかわりにCaがCa:Mg = 1:5まで,CaのかわりにMgが1:20まで置換する.加熱すると800 ℃ 付近でMgCO3が,950 ℃ 付近でCaCO3が分解してCO2を放出し,CaOとMgOの混合物となる.最大の用途は塩基性製鋼用耐火物であるが,ガラスや陶器,あるいは肥料にも用いられる.ドロマイトを主原料とした軽量陶器を,わが国では白雲陶器と称している.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
苦灰石,また白雲石ともいう。化学組成はCaMg(CO3)2で,おもに石灰岩がMgを含む溶液と反応してできた鉱床に産する鉱物。ドロストーン(苦灰岩)という堆積岩もドロマイトと呼ばれることがある。Mgの鉱石。六方晶系,菱面体が普通。柱状,板状の結晶もみられ,粒状で大理石に類するものもある。もろい。モース硬度3.5~4,比重2.8~2.9。双晶面(0001),(1010)。へき開は{1011}に完全。白色ないし緑白色,帯紅色で,透明ないし半透明。方解石に似ているが冷たい酸ではすぐに泡が出ない。石灰岩の一部が苦灰岩化したものを苦灰質石灰岩という。ドロマイトはフランスの地質・鉱物学者ドロミューGratet de Dolomieu(1750-1801)にちなんで名付けられたものである。栃木県葛生,大分県津久見に産する。
執筆者:柿谷 悟
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