ベックフォード(読み)べっくふぉーど(英語表記)William Beckford

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベックフォード」の意味・わかりやすい解説

ベックフォード
Beckford, William

[生]1760.10.1. ウィルトシャー,フォントヒルギフォード
[没]1844.5.2. バース
イギリス文人富豪の家に生れ,5歳でモーツァルトのピアノ・レッスンを受け,長じては W.チェンバーズから建築を学んだ。国会議員となったが,1796年以後は壮大なゴシック風の館の建築に没頭,そこで美術骨董品や希書に囲まれ,世間とは没交渉に享楽生活をおくった。唯一の重要な作品『バテック』 Vathek,an Arabian Taleは,82年にフランス語で書かれ 86年に匿名英訳出版された。実生活において追求することになる東洋趣味に文学的表現を与えたアラビアン・ナイト風の幻想譚で,奇書の名が高い。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベックフォード」の意味・わかりやすい解説

ベックフォード
べっくふぉーど
William Beckford
(1759―1844)

イギリスの作家。ロンドン市長の子に生まれる。国会議員となったが、巨富を投じて集めた希書骨董(こっとう)品を自ら建てたフォントヒル館に収めて、1796年以来ここに隠栖(いんせい)した。その生活を反映していると思われる恐怖小説『バセック』(1786)は、アラビアのイスラム教国の王バセックが悪魔エブリスに仕えて悪業や冒険を重ね、エブリスの地下殿堂永劫(えいごう)の苦しみに落ちる東洋趣味の物語。二冊の旅行記も広く読まれている。

[小野寺健]

『小川和夫訳『ヴァセック』(1980・国書刊行会)』

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