神の乗用として,また祈願祈禱のため,神社に奉献する馬のこと。〈じんめ〉とも読み,神駒(かみのこま)ともいう。いわゆる〈絵馬〉は,神馬の形を額に描いて奉納する略儀から生まれた。また,木石で彫刻したものを献ずる場合もある。神馬は必ず装飾するのを例とし,四手(しで)を額髪の左右および中に三つ,とり髪に五つ,尾のつけ根に七つ付けるという。この起源は明らかでないが,770年(宝亀1)8月に朝廷より幣帛を伊勢,八幡等へ奉る際,伊勢神宮へ赤毛馬1匹,八幡宮と若狭彦神へ鹿毛馬各1匹を献じたことが記録にみえる。以後,祈雨止雨や飢饉等の報賽として神馬を諸社に奉ったことが史書に散見する。《延喜式》の臨時祭の規定には,雨を祈る祭りには黒毛の馬,晴を祈る祭りには白毛の馬を奉献することがみえる。中世以降は,武将が戦勝を祈願する際に神馬奉献のことが盛んに行われた。古い神社では,境内に必ず神馬舎,神厩舎がおかれているのはこのためである。
執筆者:茂木 貞純
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
神の乗る神聖な馬。多くの大社には神馬舎があって、他の馬とは区別して飼育されている。祭礼の神幸(しんこう)(神の臨行)の際にも神馬が使用される。現在でもそうした神馬神事が行われている。五穀豊穣(ほうじょう)などを祈願して、飾りたてた神馬を疾走させたりする。白馬はとくに珍重され、氏子は白馬の飼育を避けるという地域もある。神馬を神社に献進するのは古くからの風習で、絵馬の奉納はその後の変化だといわれている。
[佐々木勝]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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