ペンステモン(その他表記)beard tongue
Pentstemon

改訂新版 世界大百科事典 「ペンステモン」の意味・わかりやすい解説

ペンステモン
beard tongue
Pentstemon

ゴマノハグサ科の1属で,多年草,まれに小低木。茎は基部で分枝して直立する。葉は対生。茎の上部に総状花序または円錐花序をつくり,数個から多数の花をつける。萼は鐘形で5片に深く裂ける。花冠は左右相称の筒形で,下側がややふくらみ,上下2唇に分かれ,上唇は2裂,下唇は3裂する。おしべは4本で,下側の2本が長い。1本の仮雄蕊(かゆうずい)が花筒の基部上側に付着し,花筒内を斜めに横切って先端は花喉(かこう)の下部に達する。蒴果(さくか)は卵形。北アメリカからメキシコにかけて250種ほどが知られ,園芸植物として栽培されるものが多い。アジアにはイワブクロP.frutescens Lamb.1種のみがある。これを別属とする意見もあるが,花の基本的な構造は同じである。
執筆者: ペンステモンは原種も美しい花をつける種が多いが,園芸的に育成されたペンステモン・グロキシニオイデスP.gloxinioides Hort.(P.hartwegii Benth.とP.cobaea Nutt.の交配種といわれる)が多く栽培される。草丈30~60cm,赤,ピンク,およびこれに白目入り,白などのグロキシニアに似た花を穂状に咲かせる。二年草として初夏播種(はしゆ)し翌夏咲かせ,鉢物花壇用とする。雑種のためか,種子のできにくいものがあり,株分け挿木で増殖するとよい。このほかメキシコ原産のムラサキツリガネヤナギP.glaber Purshやペンステモン・ゲンチアノイデスP.gentianoides Lindl.,北アメリカ原産のツリガネヤナギP.campanulatus Willd.,ペンステモン・プロケルスP.procerus Dougl.,シロバナツリガネヤナギP.digitalis Nutt.,ペンステモン・ヒルスツスP.hirsutus Willd.などかなり多くの種類が渡来しているが,それほど栽培されていない。いずれも宿根草として扱われる。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペンステモン」の意味・わかりやすい解説

ペンステモン
ぺんすてもん
[学] Penstemon

ゴマノハグサ科(APG分類:オオバコ科)ペンステモン属(イワブクロ属)の総称。北アメリカに250種ある。日本にはイワブクロP. frutescens Lamb.1種が分布するとされていたが、イワブクロは独立したイワブクロ属Pennellianthusとなった。イワブクロは多年草で、茎は根出葉から抜け出す。葉は対生または輪生し、茎葉は葉柄がない。5月ころ、総状または円錐(えんすい)状花序をつくり、筒状の唇形花を開く。花壇、切り花、鉢植え用に栽培される。ペンステモンの代表的なものは、シロツリガネヤナギP. digitalis Nutt.である。高さ0.7~1メートル。5月ころ、淡紅色を帯びた白色花を開く。おもに切り花に利用する。また、改良種のベニツリガネヤナギP. gloxinioides Hort.はやや寒さに弱いが、大輪花を開き、花色も鮮明で、紅、白、桃、紫色の品種がある。鉢植え、花壇用として観賞する。そのほか、ヒメツリガネヤナギ、ヤナギチョウジなどが栽培される。

 繁殖はおもに秋口に株分けで行うが、実生(みしょう)も可能で、春に播種(はしゅ)した苗を秋に植え付ける。排水、日当りのよい場所が適地である。石灰質土壌でよく育つので、植え付け時に石灰を施すとよい。

[神田敬二 2021年8月20日]


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百科事典マイペディア 「ペンステモン」の意味・わかりやすい解説

ペンステモン

北日本の山地に自生するイワブクロを含む,ゴマノハグサ科の一属で,大部分は北米に分布し,250種くらいある。多年草または低木で,花壇や切花用に栽植される種も多い。夏〜秋,鐘形の花を頂生,多くは穂状となる。花筒は長く先は5裂。繁殖は,ふつう早春,株分けでする。ペンステモン・カンパニュラタス(ツリガネヤナギとも)は高さ40〜60cmになる半低木性で,花色は紫紅またはすみれ色。交雑種は強健で花つきがよく,グロキシニアに似た形の大きな花を開く。その他,花冠の細長いペンステモン・バルバタス(ヤナギチョウジとも)や,花筒が途中で急にふくらんでいるペンステモン・コベア(ウスムラサキツリガネヤナギとも),〈ヒアシンス・フラワー〉などと呼ばれて流通しているペンステモン・ストリクタスなどがある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ペンステモン」の意味・わかりやすい解説

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