ホテイラン(読み)ほていらん

改訂新版 世界大百科事典 「ホテイラン」の意味・わかりやすい解説

ホテイラン
Calypso bulbosa (L.) Oakes var.speciosa (Schltr.) Makino

亜高山の針葉樹の林床にまれに生え,美しい花を咲かせる小型のラン科の地生ラン。学名は,ギリシア神話の海の妖精カリュプソに,和名は,その唇弁の形を七福神布袋に見立てたもの。茎の基部は偽球茎となる。偽球茎の側方より新しい芽が伸長し,秋に葉を1枚展開して越冬する。葉は楕円形で長さ2.5~5cm,裏面紫色をおびる。5月ころ,高さ10cmくらいの花茎の先に花を1個つける。花は淡紅色で径約3cm弱,やや下向きに開く。萼片花弁は開出する。唇弁はスリッパ状の袋になり,2裂する距がある。本州の中・北部の亜高山に分布する。基本変種C.bulbosa北半球亜寒帯に広く分布する。

 ホテイラン属Calypsoは1種よりなる属で,袋状の唇弁,2裂する距などで特徴づけられる。この唇弁の構造はマルハナバチ類がもぐり込むのに適しており,マルハナバチ類による受粉が北アメリカで報告されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホテイラン」の意味・わかりやすい解説

ホテイラン
ほていらん / 布袋蘭
[学] Calypso bulbosa (L.) Oakes var. speciosa (Schltr.) Makino

ラン科(APG分類:ラン科)の多年草。偽鱗茎(りんけい)があり、1枚の葉と1本の花茎をつける。葉は楕円(だえん)形で長さ2.5~5センチメートル、裏面は紫色を帯びる。5月ころ、高さ約10センチメートルの花茎の先に、花を1個やや下向きに開く。花冠は径約3センチメートル、淡紅色で美しい。萼片(がくへん)と側花弁は同形、狭披針(きょうひしん)形で開出する。唇弁はスリッパ状の袋になり、2裂する距(きょ)がある。亜高山の針葉樹林下に生え、中部地方以北の本州にまれに分布する。基本種は北半球の亜寒帯に広く分布する。名は、膨れた唇弁を布袋(ほてい)の腹に見立てたもの。

井上 健 2019年5月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホテイラン」の意味・わかりやすい解説

ホテイラン(布袋蘭)
ホテイラン
Calypso bulbosa var.speciosa

ラン科の多年草で地生ランの1種。本州中部の亜高山帯の針葉樹林下にまれに生える。ラッキョウ状の偽鱗茎 (→鱗茎 ) を取囲むように2枚の鞘状葉を出し,その間から1枚の普通葉が出る。葉身は長さ 2.5~5cm,幅 1.5~3cmで縦ひだが目立ち,縁は波状にちぢれ,裏面は紫色を帯びる。6~7月,高さ 10~15cmの花茎の頂に1花をつける。萼片と側花弁は開出して先がとがり,淡紅色に褐色を帯び,長さ2~3cm,幅3~4mm。唇弁は名が示すように袋状に下垂し,白色で淡褐色斑があり,2裂した前方に長くせり出す。

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百科事典マイペディア 「ホテイラン」の意味・わかりやすい解説

ホテイラン

本州中〜北部の深山の針葉樹中にまれにはえるラン科の多年草。地下の浅いところに小さい偽球茎があり,先端に1本の花茎と1枚の葉をつける。葉は楕円形で縦ひだがあり,裏面は紫色を帯びる。花は長さ3〜4cm,淡紅色で,5〜6月,10cm内外の花茎の頂に横向きに咲く。花被片は狭披針形で先がとがり唇弁(しんべん)は袋状となる。

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