とぎ上げともいう。数本のといし片をばねや油圧を利用して加工物に押しつけ,回転運動と往復運動を同時に行わせて表面の加工を行う砥粒(とりゆう)加工の一種。高品質な表面が得られるため,精密部品の最終仕上工程として用いられる。といしの回転周速度vpと軸方向速度vaの大小関係によって,加工物表面にはさまざまなクロスハッチ状の研削条痕が形成される。両者の比va/vp=tanθで表されるθを交差角と呼び,加工能率を高めたい場合には交差角を比較的大きくとり,2θ≃60°程度とする。これは軸方向速度が上昇すると,砥粒に作用する力の方向変化が速くなって自生発刃作用が促進されるという性質を利用している。仕上加工の場合には2θ≃20~40°程度が選ばれる。回転周速度は通常の研削加工に比べるとかなり遅く,多くの場合にvp≦70m/minである。ホーニング圧力はこれを大きくすると加工能率が上がるが,あまり大きすぎるとといしの減耗が著しくなる。粗加工では0.5~2.0MPa,仕上加工では0.2~0.8MPa程度に設定される。ホーニングといしは加工物と広い面積で接触するため,個々の砥粒に作用する力は小さく,このため表面粗さが小さく,また加工変質層の少ない良好な表面が形成される。
ホーニングがもっとも多く利用されるのは内周面の加工であるが,このときといしの数と寸法は加工表面の寸法によって決められる。小径加工の場合は2~3個,大径加工の場合には8個程度まで増加される。といしの長さは加工物長さの半分程度とし,加工物両端でといし長さの約1/4が突き出すように往復運動の距離が定められる。加工液としては灯油や軽油のように粘性の低い油を多量に供給して,発生熱や切りくずの除去を積極的に行わせる。ホーニングを行う機械をホーニング盤honing machineと呼び,内径,外径,平面の加工用がある。内径ホーニング盤の場合,図に示したように加工物,あるいは工具の支持を浮動式とすることが多い。また重力による曲げやたわみを避けるために,軸は垂直とする場合が多い。
執筆者:稲崎 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 研削加工は,といしを用いて加工物を削り,所要の精度および形状を与える加工法で,表面を高い精度で仕上げたいときや,焼入れした面の仕上げなどに用いられる。高速で回転するといしを用い,これに機械的にある一定の切込みを与えて行われるほか,といしに圧力を加えて研削を行う方法としてホーニングや超仕上げがあり,また砥粒のついたベルトにより加工するベルト研削加工もある。 遊離砥粒を用いて行う加工には,工具と加工物との間に砥粒あるいは砥粒と油などを混合したものを入れて,加工物を押し付けながら相対運動を行わせ,砥粒によりきわめて微小の切りくずを削りつつ加工を行うラッピング,砥粒を周囲に接着したホイール状の工具を高速回転させ,これに工作物を押し付けて加工するバフ仕上げ,バレルと称する容器内に砥材と工作物と工作液を入れて,回転または振動させて表面の仕上げを行うバレル加工などがある。…
※「ホーニング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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