ホーベルモ(読み)ほーべるも(その他表記)Trygve Haavelmo

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホーベルモ」の意味・わかりやすい解説

ホーベルモ
ほーべるも
Trygve Haavelmo
(1911―1999)

ノルウェーの経済学者。スケトスモに生まれる。1933年にオスロ大学を卒業、同大学経済研究所でR・A・K・フリッシュ助手となったが、1939年にアメリカに渡った。第二次世界大戦の戦火が激しくなったため、アメリカに滞在し、ハーバード大学博士号を取得、シカゴ大学教職についた。1947年にノルウェーに戻り、1948年オスロ大学教授に就任、1979年に名誉教授となった。

 ホーベルモは、計量経済学を創始したフリッシュの教えを受け、確率論を応用した計量経済モデルを構築した。どのような精密なモデルでも現実の経済発展は複雑な要因がからんでいるため正確なものを表すことはできないとし、統計学の多重共線性(ある関係における原因変数のいくつかが実際になんらかの方法で連係し、ともに上昇したり下降したりする確率)を計量経済学に導入することにより、計量経済モデルの精度を高めた。そのほか、国内の投資の発展に関する研究(1960年発表の『A Study in the Theory of Investment』)でも知られる。ホーベルモは1989年にノーベル経済学賞受賞したが、その受賞理由は「計量経済学における確率論的アプローチによる方法論的基礎の確立」であった。

[金子邦彦]

『山田勇編・訳『計量経済学の確率的接近法』(1955・岩波書店)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ホーベルモ」の意味・わかりやすい解説

ホーベルモ
Trygve Haavelmo
生没年:1911-

ノルウェーの経済学者。オスロ大学教授。経済学の理論実証の両分野にわたる多彩な研究業績をあげている。とりわけ,経済行動の相互依存性とその確率的な関係を,経済理論と近代統計学にもとづいて測定することを中心とした計量経済学の方法論を,一般性をもつ理論として体系化し,今日の計量経済学の理論的基礎を与えた。この貢献は,経済学説史の上からも特記すべきことであった。

 個々の経済現象は,それを他の諸現象と切り離して分析することができず,経済行動を統計的に(数量的に)測定しようとすると,ごく限られた特殊な状況における観察結果を利用しないかぎり,ある一方的な偏りを測定結果に生じることを論証し,測定の一般原理を明らかにした。彼のもう一つの業績は,近代経済学における資本の理論で生じた投資と資本蓄積との関係の混乱に対して,問題の所在を明示したことである。1989年ノーベル経済学賞を受賞。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホーベルモ」の意味・わかりやすい解説

ホーベルモ
Haavelmo, Trygve

[生]1911.12.13. スケトスモ
[没]1999.7.28. オスロ
ノルウェーの計量経済学者。オスロ大学で R.フリッシュに学び,1946年博士号取得,1948~79年オスロ大学教授となる。 1944年に公刊された『計量経済学の確率的接近法』 The Probability Approach in Econometricsにおいて経済測定学独自の分野の基礎を築いた。ほかに『経済進歩の研究』A Study in the Theory of Economic Evolution (1954) や,投資の最適化行動理論の端緒をつくった『投資理論の研究』A Study in the Theory of Investment (1960) などがある。計量経済学の確率論的基礎の解明などにより 1989年ノーベル経済学賞受賞。

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