ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バルドビネッティ」の意味・わかりやすい解説
バルドビネッティ
Baldovinetti, Alesso
[没]1499. フィレンツェ
イタリアのフィレンツェ派の画家。モザイク師。ドメニコ・ベネチアーノの弟子とされるが,カスターニョやピエロ・デラ・フランチェスカからも影響を受けた。 1448年フィレンツェの聖ルカ画家組合に加入。風景描写に新生面を開き,その初期の作品『キリスト降誕』 (1460~62,フィレンツェ,サンティシマ・アヌンツィアータ聖堂) や『聖母子』 (65頃,ルーブル美術館) などでは,独特の彩賦法による自然の実感に即した写実描写で明澄な風景表現に成功している。また人物表現でも,人物像を鋭い精妙な線で描いて,先の『聖母子』や『婦人像』 (ロンドン,ナショナル・ギャラリー) のような傑作を残した。さらに『聖告』 (66~73,サン・ミニアート聖堂) では,自己の工夫した絵画溶剤を用いてすぐれた造形効果をみせている。彼が溶剤や技法の研究に専念したことは,『覚え書』 Recorde (49~91) から知られている。壁画,モザイク装飾,ステンドグラス制作などにも従事した。 83年以降,フィレンツェのサン・ジョバンニ洗礼堂のモザイク装飾主任となるが,晩年の絵画作品は,弟子のギルランダイオの影響を逆に受けて精彩を欠いた。
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