ポーイス(その他表記)Powys

翻訳|Powys

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポーイス」の意味・わかりやすい解説

ポーイス
Powys

イギリスウェールズ中東部の単一自治体(ユニタリー unitary authority)。行政府所在地ランドリンドッドウェルズ。旧モントゴメリーシャー県,ラドナーシャー県,ブレックノックシャー県(南端部を除く)およびデンビシャー県の南端部からなる。1974年の自治体再編でポーイス県として新設され,1996年単一自治体に移行した。ウェールズ最大の単一自治体で,東はイングランドに接する。区域の大部分カンブリア山地の一部からなり,北にバーウィン山脈,西にプリンリモン山地,南にブレコンビーコンズ山地がある。セバーン川,ワイ川,アスク川,ダビ川などの河川が流れ,それらの河谷にわずかに低地がある。河谷沿いに砦を築いたローマ人が撤退したのち,ウェールズの土侯たちが数世紀にわたって支配し,その勢力は東方の「オッファの防塁」にまで及び,ケルト系キリスト教も栄えた。その後東部,南東部の谷を中心にノルマン人の支配を受け,1282~83年にイングランドのエドワード1世に征服された。山地の土壌はやせているが,農業が主産業で,ヒツジ肉牛が飼育されるほか,河谷の低地で酪農と耕種農業が行なわれる。鉱業部門ではかつて盛んであったスレート採石と鉛採掘に代わって,花崗岩,ケイ質砂岩,石灰岩の切り出しが行なわれる。工業は小規模な軽工業が中心で,古くからの毛織物工業は衰退。南部にブレコンビーコンズ国立公園があるなど,風光に恵まれるため,観光業が重要な産業となっている。面積 5179km2。人口 13万2000(2007推計)。

ポーイス
Powys, Llewellyn

[生]1884.8.13. ドーチェスター
[没]1939.12.2. スイス,クラバデル
イギリスの随筆家小説家。ポーイス3兄弟の末弟。ケンブリッジ大学卒業。ケニア農場を経営,ニューヨークに渡り,以後パレスチナ,西インド,スイスと渡り歩いた経歴は,その作品に投影されている。『ドーセット随筆』 Dorset Essays (1935) や『スイス随筆』 Swiss Essays (47) は名作誉れが高い。ほかに,自伝小説『愛と死』 Love and Death (1939) など。

ポーイス
Powys, John Cowper

[生]1872.10.8. ダービーシャーシャーリー
[没]1963.6.17. メリオネス
イギリスの小説家,詩人。ポーイス3兄弟の長兄。小説『グラストンベリー・ロマンス』A Glastonbury Romance (1933) などのほか,評論『ドストエフスキー』 Dostoievsky (46) やホメロス研究 (54,59) ,詩集『ルーシファー』 Lucifer (1956) ,自伝 (34) がある。

ポーイス
Powys, Theodore Francis

[生]1875.12.20. ダービーシャー,シャーリー
[没]1953.11.27. ドーセットシャー,マップパウダー
イギリスの小説家。ポーイス3兄弟の次兄。ドーセットシャーの田舎に住み,南イングランドの田園や農民の生活を主題にした作品を書いた。写実とアレゴリーの手法にユーモアを交えた独特の作風。主著『ウェストン氏のよいワイン』 Mr. Weston's Good Wine (1927) 。

ポーイス(伯・侯家)
ポーイス[はく・こうけ]
Powis, Earls and Marquesses of

イギリス,ウェールズ地方の貴族の家柄。9世紀頃成立。ウィリアム・ハーバートが 1674年ポーイス伯爵,87年侯爵となる。その家督はしばしばとだえたが,1804年プラッシーの戦いで有名な R.クライブの子エドワード (1754~1839) がポーイス伯爵を継ぎ,現在にいたっている。

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改訂新版 世界大百科事典 「ポーイス」の意味・わかりやすい解説

ポーイス
John Cowper Powys
生没年:1872-1963

イギリスの小説家,評論家,詩人。大学の巡回講師としても有名。ウェールズの牧師の子。兄弟姉妹11人のうち4人までが作家という,ひどく文学的,閉塞的な家庭に育った。ケンブリッジ大学卒業。彼の作品は善なる自然と悪なる人間という独特な汎神論的神秘主義を基調にしており,《嵐が丘》風の狷介不覊(けんかいふき)な人物に満ちた幻想的な小説《木と石》(1915),《ダクデーム》(1925),《ウルフ・ソレント》(1929)などが有名である。このほか《懐疑家の宗教》(1925),《孤独の哲学》(1933)といった一般的な評論,《ドストエフスキー》(1947),《ラブレー》(1948)などの評伝もある。なお,80歳になって中世北ウェールズのロマンスを扱った《ポリウス》(1951),精神病患者どうしの恋を描いた《患者》(1952)などの優れた作品を出版し,世間を驚かせた。ケンブリッジ大学出身で巡回講師としても著名な,《黒檀と象牙》(1923),《険悪な笑い》(1924)の著者ルウェリン・ポーイスLlewellyn Powys(1884-1939),特異で沈鬱な文体で南イングランドの田舎のみを描き続け,そこに悪意に満ちた現世を象徴する小宇宙をつくり出している,《ブラック・ブライオニー》(1923)や《ウェストン夫人の美酒》(1927)の著者セオドア・フランシス・ポーイスTheodore Francis Powys(1875-1953)もともに彼の弟である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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