アメリカの女流小説家。ジョージア州に生まれる。初めピアニストを志してニューヨークへ出るが、その直後に授業料を紛失し音楽家を断念、コロンビア、ニューヨーク両大学の創作クラスで学ぶ。旺盛(おうせい)な創作活動期は1940年代で、最初の長編『心は孤独な猟人』(1940)は、孤独からの脱出を求める寂しい心を描いて賞賛された。以後、南部の陸軍駐留地内の殺人事件を扱った『金色の眼(め)に映るもの』(1941)、12歳の孤独な少女の心理を描く『結婚式のメンバー』(1946)などで、孤独と愛の問題を一貫して追究。後者は作者により脚色(1950)され、アメリカ演劇史上、重要な作品とみなされている。その後はリウマチ熱のため健康が優れず、失敗作といわれるものが多い。彼女の文学は写実性と巧みなアレゴリー(寓意(ぐうい))のうえに成り立ち、主題の音楽的展開、グロテスクな人物や状況の設定を特色としている。
[武田千枝子]
『渥美昭夫訳『結婚式のメンバー』(1972・中央公論社)』
アメリカ南部出身の女流作家。ジョージア州コロンバスに生まれ,コロンビア大学,ニューヨーク大学で創作を学んだ。23歳のとき,南部の工場町を背景に,聾啞者シンガーが精神病者の友人に抱く無償の愛と,彼に心の支えを求める過激主義者,思春期の少女,黒人医師たちを描いた《心はさびしい猟人》(1940)により一躍作家の地位を築き,さまざまな病気,脳卒中による麻痺に苦しみながら完成度の高い作品を書いた。軍駐屯地の異常な人間関係を扱った《黄金の眼に映るもの》(1941),12歳の少女の不安定な心理を描き,後にみずから脚色してブロードウェーで成功した《結婚式の参列者》(1946),大女と2人の男の三角関係の物語《悲しい酒場の歌》(1951)など,いずれも肉体的,心理的な奇形,病気,ゆがみをもつ人物を通して,人生に潜む恐怖,寂しさ,人とのつながりへの渇望を描き出している。ほかに長編《針のない時計》(1961),短編,戯曲,詩,エッセーがある。
執筆者:海老根 静江
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