マノン・レスコー(読み)まのんれすこー(英語表記)Manon Lescaut

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マノン・レスコー」の意味・わかりやすい解説

マノン・レスコー
まのんれすこー
Manon Lescaut

フランスの作家アベ・プレボーの小説。1731年刊。正しくは『シュバリエ・デ・グリューとマノン・レスコー実話』La véritable histoire du chevalier Des Grieux et de Manon Lescaut。『隠棲(いんせい)したある貴人の回想録』(1728~31)と題された作品集の第七巻に含まれる作品だったが、『マノン・レスコー』は別巻で出版され、当時から今日に至るまで、プレボーといえば一般に『マノン・レスコー』の作者と知られるほどこの作品は有名である。

 学業を終え、アミアンから故郷へ帰ろうとしたデ・グリューは、アラス行きの馬車から降りた美しいマノンの魅力にすっかりとらわれてしまう。父親や親友ティベルジュを欺き、2人はパリに駆け落ちする。デ・グリューの懐(ふところ)具合が寂しくなるとほかの男に目移りする小悪魔的なマノンは、女性の一面をのぞかせる。デ・グリューは犯罪を重ねても彼女の魔性から逃れられない。やがてマノンはアメリカへ送られ、彼はそのあとを追っていくが、最後はマノンとともに砂漠へ逃げる。マノンは疲労のためにそこで死に、デ・グリューはその亡骸(なきがら)を砂に埋めてフランスに戻る。2人の情念現世成就(じょうじゅ)できないという設定に、作者の宗教観の投影をみることができる。

[市川慎一]

 また、この作品は、マスネ作曲『マノン』(1884、パリ初演)、プッチーニ作曲『マノン・レスコー』(1893、トリノ初演)、ヘンツェ作曲『孤独な通り』(1952、ハノーバー初演)と、オペラ化されている。

[編集部]

『河盛好蔵訳『マノン・レスコー』(岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マノン・レスコー」の意味・わかりやすい解説

マノン・レスコー
Manon Lescaut

フランスの小説家アベ・プレボーの代表作。 1731年,半自伝的小説『ある隠遁した貴族回想と冒険』 (7巻) の最終巻として出版。 53年に加筆訂正された決定版が単独で刊行された。正式の題名は『シュバリエ・デ・グリューとマノン・レスコーの物語』 Histoire du chevalier des Grieux et de Manon Lescaut。華美と贅沢を好み愛と本能のままに生きる美少女への愛のため,一切を捨て破滅する聖職者志望の名門出の青年の悲恋物語。心理描写にすぐれた 18世紀の代表的恋愛小説。のちにマスネーやプッチーニによってオペラ化された。

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