マルコフ(読み)まるこふ(英語表記)Андрей Андреевич Марков/Andrey Andreevich Markov

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マルコフ」の意味・わかりやすい解説

マルコフ
まるこふ
Андрей Андреевич Марков/Andrey Andreevich Markov
(1856―1922)

ロシアの数学者。リャザニに生まれ、1878年ペテルブルグ大学を卒業。同年母校の私講師、1896年科学アカデミー会員、1898年母校の教授となった。彼の業績としてはチェビシェフおよびリャプノフАлександр Михайлович Ляпунов/Aleksandr Mihaylovich Lyapunov(1857―1918)とともにロシアにおける確率論研究のよき伝統をつくったことである。すなわちマルコフは「ある系の時間的発展模様が系の現在における状態と目標としている未来の時点とだけで確率論的に定まるような確率過程」を導入した。これは今日「マルコフ過程」とよばれている。著書に『定差法』(1896)と『確率論』(1912)がある。

吉田耕作

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マルコフ」の意味・わかりやすい解説

マルコフ
Markov, Andrei Andreevich

[生]1856.6.14. リャザン
[没]1922.5.20. ペトログラード
ロシアの数学者。ペテルブルグ大学に入学 (1874) 。 P.チェビシェフの主宰するペテルブルグ学派の研究会にも出席。彼の確率論の研究には,チェビシェフの影響が大きい。 1878年,卒業時に『連分数による微分方程式の解法』によって金賞を贈られる。ペテルブルグ大学講師 (80) ,助教授 (86) ,教授 (93~1905) 。初期の研究は整数論と解析学であったが,1900年頃から確率論を主として研究。彼の重要な業績は,いわゆるマルコフ連鎖の導入である (→マルコフ過程 ) 。マルコフ連鎖理論は,互いに従属する事象の確率の研究に起源をもつもので,現代の確率過程論の一部分として,生物学,社会科学に広く応用されている。そのほか彼は,独立な事象に関するいくつかの古典的結果を,いくつかの型の連鎖に拡張した。

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