チェビシェフ(読み)ちぇびしぇふ(英語表記)Пафнутий Львович Чебышев/Pafnutiy L'vovich Chebïshev

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チェビシェフ」の意味・わかりやすい解説

チェビシェフ
ちぇびしぇふ
Пафнутий Львович Чебышев/Pafnutiy L'vovich Chebïshev
(1821―1894)

ロシア数学者。貴族の出身で、幼時から家庭教師につき、フランス語を得意としていた。1841年モスクワ大学を卒業し、「方程式の根の計算」という研究発表で銀メダルを受けた。1846年修士の学位をとってペテルブルグ大学に移り、ここで一生を過ごした。1849年合同論についての博士論文を発表した。このなかでπ(x)をxより小さい素数個数としたとき、不等式

が成立することを示した。1850年には「ベルトランの予想」、つまり「nが3より大きい自然数のとき、nと2n-2の間に素数が存在する」を証明した。いずれの証明にも解析学を用いており、解析的数論の創始者の一人になった。1860年代になって確率論の研究をはじめ、チェビシェフの不等式や中心極限定理を出し、確率論でのペテルブルグ学派をつくった。また工学的な機械をつくる過程でチェビシェフの多項式発見し、現在の最良近似論の基礎を確立した。

[井関清志]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チェビシェフ」の意味・わかりやすい解説

チェビシェフ
Chebyshev, Pafnutii L'vovich

[生]1821.5.16. オカトボ
[没]1894.12.8. ペテルブルグ
ロシアの数学者。 1832年,一家がモスクワに移住したので,中等教育を家庭教師によって受ける。彼に数学を教えた P.N.ポゴレルスキーは,当時のモスクワでは名の知られた教師であったという。モスクワ大学卒業 (1841) 。学生時代に『方程式の根の計算』についての論文で,大学より銀賞を与えられた。ペテルブルグ大学講師 (47) ,員外教授 (50) ,教授 (60) となり,80年に退職するまでその職にとどまる。最初は高等代数学,整数論を講義したが,のちに積分楕円関数,差分法も講義した。彼の仕事は微積分を駆使したものが多いが,大別すると解析的整数論,確率論,関数の最良近似の理論などに分けられる。確率論においては,66年に大数の法則を一般化し,87年にはド・モアブルラプラスの中心極限定理を一般化した。関数近似の理論は,52年に外国に留学して興味をもった蒸気機関のピストンの往復運動の研究から生じた。彼は連続関数 f(x)を多項式 P(x)によって近似しようとし,その研究のなかでチェビシェフの多項式や直交関数系が発見された。また,数学的発見においてだけでなく,ペテルブルグ学派と呼ばれる一群の数学者集団をつくり上げた点においても,高く評価される。

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