日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミドルマーチ」の意味・わかりやすい解説
ミドルマーチ
みどるまーち
Middlemarch
イギリスの女流小説家ジョージ・エリオットの代表作。1871~1872年作。「地方生活の研究」という副題の示すとおり、地方都市ミドルマーチの全体像を、第1回選挙法改正(1832)の前夜という時点において、蜘蛛(くも)の巣のように錯綜(さくそう)する人間関係の織り糸をたどることによってとらえようとした作品。ドロシア・ブルックの物語、医者リドゲイトの物語、ガース一家とフレッド・ビンシイの物語、銀行家バルストロウドの物語の四つよりなるが、それぞれを有機的に関連させて、一つの共同体の実体を深い洞察力と円熟した手法で浮き彫りにしていく作者の手腕は、みごとのひとことに尽きよう。バージニア・ウルフは、イギリス小説の古典ともいうべきこの作品に、「大人のために書かれた数少ないイギリス小説の一つ」と賛辞を呈した。
[川本静子]
『工藤好美・淀川郁子訳『ミドルマーチ』全2巻(1975・講談社)』