前5世紀のギリシアの彫刻家で青銅彫刻を得意とした。生没年不詳。アッティカ地方エレウテライの出身。古代の文献はミュロンの手になる多くの作品の名を伝えているが,原作はすべて失われており,ローマ時代の模刻像と確実に結びつけることができるのは《ディスコボロス(円盤を投げる人)》(ローマ国立美術館ほか)と《アテナとマルシュアス》(フランクフルト古代彫刻美術館ほか)の二つだけである。前者は,円盤をいままさに投擲(とうてき)しようとする運動選手を表したものであり,後者は,発明した竪笛を捨てる女神アテナとそれを拾おうとする獣人マルシュアスを表した群像である。両者はいずれも,一つの動きが次の動きに移る一瞬の静止状態でとらえられており,それは,ミュロンが動きの表現に卓越していたという古代人の批評を裏づけている。
執筆者:中山 典夫
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…この時代は一般には前5世紀後半の盛期クラシック(〈崇高な様式〉)と前4世紀の後期クラシック(〈優美な様式〉)とに区別される(この区別と命名はウィンケルマンによる)。盛期クラシックには,ペリクレスのアクロポリス復興計画に基づき,パルテノン,プロピュライア,エレクテイオンなどの壮麗な建物が完成し,彫刻では,フェイディアス,ミュロン,ポリュクレイトスらの巨匠が活躍した。前5世紀末のペロポネソス戦争,前4世紀の絶えまないポリス間の対立・抗争を通じて,人びとの感情・思想はより現実的・人間的になり,宗教的関心もしだいに弱まった。…
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