ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ムタナッビー」の意味・わかりやすい解説
ムタナッビー
al-Mutanabbī
[没]965.8. ダイル・アルアークル
アラブの詩人。本名 Abū al-Tayyib Aḥmad ibn Ḥusain。ムタナッビーは「預言者と称する男」という意味のあだ名。水運び人の子として生れ,若い頃シリア砂漠の遊牧民のなかに入り,生粋のアラビア語を学んだ。稀有の詩才と非凡な記憶力,および南アラブ族の優越性に対する強い誇りをもっていた。過激な政治,宗教運動に加わったり,みずから預言者と称したりし,投獄や流浪など波乱の多い歳月をおくったが,すぐれた詩をつくりつつ,シリア,エジプト,イラクなどの宮廷をめぐり歩いた。やがて大詩人として多くの賛美者を得たが,そしる者も多かった。晩年シーラーズにいたブワイフ朝の王アドゥド・ウッダウラの宮廷に迎えられ,そこからバグダードに向う途中,遊牧民の群盗に襲われ息子とともに殺された。死後,アラブ族の生んだ最も偉大な詩人の一人との評価が定まった。「ディーワーン」 (個人詩集) がある。
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